「評伝」高橋里志
◎浪人、打撃投手、20勝-ドラマチックな野球人生
態度の悪さから監督に殴られてクビ。打撃投手で拾われた機を生かして20勝投手となり、2つのタイトル獲得。スーパースターとは最悪の仲。球場の鏡をたたき割る。引退後はスナックのマスター…。
2021年1月31日に亡くなった高橋里志の野球人生である。一本筋が通っているのは熱い思いが行動になってしまうことで、それがトラブルを生んだ。
1968年にドラフト4位で南海(現ソフトバンク)入り。二軍時代、ふてくされた態度を野村克也にとがめられてゲンコツ。そして自由契約に。浪人生活を経て74年に広島の打撃投手に採用された。南海時代のコーチだった古葉竹識が古巣に戻った縁からだった。
77年、大化けする。なんと20勝。それまで実働7年でたった9勝。ウソのようなホントの話だった。
この時期、クローザーに江夏豊がいた。だれもが認めるスーパースター。これが“犬猿の仲”。江夏のリリーフが気に食わないといってベンチ裏の姿見の鏡を割ったほど感情的だった。
その二人をトレードで獲得したのが日本ハム。監督だった大沢啓二の後日談によると「広島のオーナーがよ、二人は仲が悪すぎるんだけどもよろしいか、と言うんだ。こっちは江夏が欲しいから、任せて下さい、と言ってもらってきた」
移籍1年目の81年、セットアッパーとして初優勝に貢献。巨人との日本シリーズでは3試合に登板し、最終第6戦では8回に投げ江夏につないだ。翌年は防御率1位。通算61勝ながら両リーグでタイトルを手にした。
ピッチングスタイルはエピソードとは裏腹にコントロールに優れた好投手だった。いろいろな面で中身の濃いドラマチックな野球人だった。(菅谷 齊=共同通信)