「大リーグ ヨコから目線」(38)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎楽しみな「剛腕」沢村拓一のレッドソックス入り
▽モットーは「九回も剛腕で制圧」
 ロッテから大リーグ移籍を目指していた沢村拓一(32)のボストン・レッドソックス入りが2月15日(日本時間16日)決まった。2年契約で300万ドル(約3億1000万円)+出来高と評価は決して高くはないが、沢村にとっては10年越しのメジャー入りとなる。
 沢村の中央大学野球部時代の監督、高橋善正氏によると。4年時に大リーグ数球団から獲得の話があったという。大学生ながら150キロを超すストレートが注目された。4年の秋に渡米してメジャー観戦をしたが、結局、プロ野球を選択。2010年のドラフト1位で巨人入りした。
 沢村といえば大学時代から筋トレ好きで知られていた。高橋監督は「投手の生命線は制球力。160キロを投げてもストライクが入らなければ」と諭したが、沢村は球場に併設されたトレーニングルームで時間を見つけては筋トレに励んだ。その成果はストレートの速さに表れ、プロに入ってからは最速159キロを記録。巨人で先発をしていた当時、取材にこう答えていた。
「モットーは制圧。先発して9回にも150キロの速球を投げて相手打者を抑え込みたい」
 要するに初回からガンガン剛球を投げ、最後まで力でネジ伏せたい、というのである。
 昨今、多少は事情が変わってきているが、プロ野球の中継ぎといえば先発で活躍し、やや力が衰えたベテランが務めるケースが少なくない。巨人の藤田元司監督はかつてベテランが中継ぎに向く理由をこう言っていた。
「先発で功なり名を挙げたベテランは若い投手に比べ、欲得がないから(縁の下の力持ちの)中継ぎに徹せられる」
 今でいえば昨年まで阪神で活躍、今季はオリックスに移籍した能見篤史(41)や巨人の大竹寛(38)がいい例か。
▽トレンドは「150キロの中継ぎ」
メジャーは事情が異なる。
沢村は入団当初こそ先発だったが、その後、リリーフに転向。15年、16年は36、37セーブで最優秀救援投手。ここ数年は主に中継ぎだが、「150キロの中継ぎ」といえば大リーグのトレンド。各球団とも勝ちゲームの中継ぎは100マイル(160キロ)近い速球を武器にしている投手がほとんど。「剛球健在」の沢村はまさにピッタリだ。
投手陣の台所事情も沢村にはプラスに働きそうだ。昨季はア・リーグ東部地区最下位だったが、投手陣の崩壊が一因だ。チーム防御率は5・58。中継ぎのそれは5・79。ともにリーグワースト2位。オフにはヤンキースとエンゼルスからセットアッパーを獲得。昨季9セーブのマット・バーンズや若手のダーウインゾン・ヘルナンデスらもいるが、ブルペンの駒不足は否めない。
監督はアストロスのコーチ時代、スパイ野球に関与したとして昨年1年間、ユニホームを脱がされたアレックス・コーラだ。常識にとらわれないクセ者監督だけに、沢村の使い方も楽しみだ。(了)