「大リーグヨコから目線」(47)- (荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎日本球界も本格的なGMの時代に
▽天下りや監督兼任では無理
「プロ野球の順位はキャンプ前に決まっている。だから試合なんてやらなくても、(プロが見れば)どこが勝つかわかる。ただ、それじゃファンが納得しないから公式戦をやるのだ」
これは西武、ダイエー(現ソフトバンク)のフロント幹部として、チーム作りに辣腕をふるった故根本陸夫から聞いた話だ。
要するにシーズンオフの間に首脳陣人事や外国人、トレード、ドラフトなどでチームの弱点をカバーし、強いチーム作りをした球団が優勝するとの考えである。今でいえばGMとして思う存分、力を発揮した根本らしいセリフである。
こんな話を持ち出したのは、プロ野球にもようやくGMの時代がやってきたと感じたからである。
今年のプロ野球界のシーズンオフ人事の最大の話題は日ハムの新庄剛志監督就任だろう。同時に、オリンピックで野球で初ので金メダルを日本にもたらせた稲葉篤紀監督のGM起用も世間をアッと驚かせた。五輪監督を通じて12球団にパイプを持つ稲葉GMに、長く現場を離れている新庄監督をバックアップさせる狙いがうかがえる。
球団のGMといえば、これまでは親会社からの天下りの野球の素人が務めたり、全権監督と称して監督が兼務することが珍しくなかった。
▽メジャーではオフの一大人事
 メジャーリーグではGM人事は監督のそれと同じような関心を集める。
今オフでいえば、メッツのGM人事が最大の話題だった。ザック・スコットGMの後任選びに10人近くをリストアップ。他球団のGMにも食指を伸ばし、所属球団に面談の許可を求めて拒否されるケーズもあった。そうした動きはMLBのホームページに掲載。結局、エンゼルスのGMだったビリー・エプラー氏招聘で決着した。契約は4年。その間で結果を出せということである。
エプラー氏はエンゼルスGMとして大谷翔平を獲得し、主力のマイク・トラウトと12年の長期契約で引き止めに成功。またジョー・アデル、ブランドン・マーシュなどドラフトで指名した若手が今季、台頭してきた。そうした手腕が買われたのだろう。一方、5年間のエンゼルス時代は4位が4回。評価は分かれている。
ブレーブスのA・アンソボウロズGMはシーズン中、トレードで獲得した4選手がポストシーズンで計12本塁打の活躍。ワールドシリーズ制覇に貢献、改めてGMの価値を高めている。 
今年の日本シリーズはリーグ優勝したヤクルトとオリックスの対決だった。奇しくもこの両球団には小川淳司、福良淳一という監督経験者がGMを務め、ここ数年、チーム作りを担ってきた。両チームの最下位からの飛躍と決して無関係ではあるまい。(了)