「いつか来た記者道」(67)-(露久保孝一=産経)

◎美しい新球場で強くなれ、ヤクルト
 ヤクルトが、将来、二つの新球場で生まれ変わる。スワローズの本拠地は、れっきとした神宮球場であるが、神宮外苑再開発計画で建て替えられ2036年に新しい球場で試合に臨むことになる予定である(前回のこのコラムで既報)。その神宮新球場誕生の前に、二軍が神宮からほど近い新しい球場に本拠地を持つ。 
 現在、二軍は埼玉県戸田市にある球場や選手寮などの施設を使用しているが、茨城県守谷(もりや)市に移転することが、23年11月正式決定した。27年1月にヤクルトファーム施設として完成する。
 観客3000人を収容する本球場、サブグランド、室内練習場、選手寮・クラブハウスを設ける本格的な野球総合ゾーンになる。この夢の施設について、ヤクルト球団の衣笠剛会長兼オーナー代行は「27年3月から始まるファーム公式戦で、プロの迫力ある試合を見ていただきたい」と期待に胸を膨らませている。
 守谷市によれば、ヤクルトの二軍ゾーンは市総合公園の中にできる。ヤクルト二軍の各施設以外に、市民野球場やサッカー場、体育館、多目的広場などが整備され、広大な総合スポーツ公園になる。
▽守谷の新球場で巨人、ロッテと熱戦
 ヤクルトが現在使っている戸田市の球場は観客席が700人収容と狭く、老朽化も進んでおり、新しい移転先を探していた。守谷市までは神宮球場から車で1時間弱で行けるので、立地面でのメリットは大きい。守谷と神宮間の選手の移動は容易であり、ファンにとっても交通の便がよく、近隣の東京、埼玉、千葉から観戦、練習見学に訪ねる人は増大しそうだ。
 ヤクルトが使う本球場の外野の外には、緑の樹木が植えられ、青空と緑の見える環境の整ったフィールドになる。神宮球場の未来計画が、環境問題で揺れ動いているなか、ファームの方が一足先に田園地帯に新本拠地を持つことになる。
 ヤクルト二軍の試合となればイースタン・リーグで、DeNA、巨人、ロッテ、楽天、西武、日本ハムと対戦する。一軍入りをめざす甲子園球児、大学リーグ、社会人の有望株、あるいは調整中の有力選手がお目見えするはずで、きれいな環境の球場で勇躍する。
 「あすの一軍スター」をめざす若手プレーヤーによる魅力ある試合は、ファン層に新しい観戦の場を提供する。ヤクルト二軍が新天地移転と決まったあと、茨城県のオールドつばめファンは、常磐自動車道の守谷サービスエリアでこう熱く語った。
 「きれいな新球場の名を汚さないように、スワローズは強くなってファンを喜ばせなくてはならない。そのためにも、いまのうちからいい若い選手をとって育ててほしいね。他チームと競ってファームの魅力を増せば、人気がぐんと高まるでしょう」
ヤクルトには、21年から連続リーグ制覇したようなハイレベルな戦力がある。この力を持続させるために、一軍で活躍する好投手、好打者への予備軍をファームでじっくりと鍛えあげることが不可欠だ。そのための新しい野球訓練場の完成が、ファンならずとも待ち遠しいところである。(続)