「大リーグ ヨコから目線」(41)―(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎大谷翔平とベーブ・ルース、同じ二刀流でも…
▽やることなすこと「ナイスガイ」
 選手としての活躍はもちろんだが、大谷翔平の「ナイスガイ」ぶりも止まらない。
5月16日(現地)、九回表に逆転2ランを放った試合後、子供の差し出すボールにサイン。地元テレビも「素晴らしい」と絶賛。
5月4日のレイズ戦ではメドウズの投手ライナーをグラブで捕球しそうとしてはじく。だが、素手で空中の打球をキャッチ、アウトにした。残念がるメドウズに近づくと大谷は「Sorry(ソリー)」。ヒット1本を損した相手に謝った。  
4月24日の13日のロイヤルズ戦ではファウルチップが捕手の股間を直撃。大谷は相手を気遣い「I am sorry(アイ アム ソリ―)」。この発言が中継していた地元局で流れると、「こんなシーンは滅多にない!」と話題に。試合ではよくあるアクシデントで、大谷には何の責任もないからだ。
速球に詰まって折れたバットの破片を自ら拾いに行き、バットボーイに渡したこともあった。このときも「メジャーではバットボーイが拾いにいくのに」と評価がまた上がった。
▽大酒飲みでセックス好き?
 二刀流の大谷はベーブ・ルースと比較される。約100年前のツーウェー・プレーヤーのレジェンドだ。
ルースと言えば「病床の少年に本塁打を約束して、実際にホームランを打った」「試合中にホットドッグを何十本も食べた」などと無邪気なヒーロー像が伝わっているが、それは一面に過ぎないようだ。
判定に怒って球審に罵詈雑言を浴びせて出場停止処分。チームの規則を破り監督から罰金を課せられたこともあった。
 実は大酒飲みで、朝から球場でウイスキーをガブ飲みすることも珍しくなかったという。またセックスも大好きで遠征中にしばしば売春宿に通ったとも報じられた。
当時と現在では選手を取り巻く環境は異なるが、ルースは「ナイスガイ」とは必ずしも言えないようだ。だが、ルースに対するマスコミの忖度だったのか、あるいは1919年の大リーグ最大の八百長「ブラックソックス事件」の後で、これ以上、球界のイメージダウンを避けたかったのか。現役中はそうしたルースの一面はほとんど伝えられなかったようだ。 
大谷は二刀流としてすでにルースに並ぶ記録を達成している。
4月25日のアストロズ戦では先発。その時点で本塁打は7本でリーグ・トップタイ。ホームランがリーグ・トップの選手が先発するのは1921年6月13日以来のルース以来だった。先発投手の本塁打10本、開幕30試合で10本塁打、30奪三振も同様だ。
すでに2桁本塁打している大谷だが、投手として10勝すれば、これまたルースの1918年「13勝7敗、11本塁打」の「同一シーズンの2桁勝利2桁本塁打」の記録に並ぶ。
メジャー選手、監督が等しく認める身体能力の大谷は「投げて打って(外野も)守る」の一人三役に加えて「ナイスガイ」。ルースを超える、新しいタイプの二刀流のヒーローと言える。(了)