「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」-(山田 收=報知)

第14回 もしセがDH制を採用したら②
 2021年5月25日から6月16日まで、2年ぶりのセ・パ交流戦が行われた。直前に新型コロナ陽性者を出した広島が打撃を受けたものの、例年パに歯が立たなかったセが49勝48敗11分け。1勝差とはいえ、09年以来2度目のセ高パ低に持ち込んだ。オリックスが2度目の優勝(最高勝率)、ソフトバンクがブービーとなったことも含めて異例だった今年の交流戦をDH戦略の視点から振り返ってみたい。
 各球団18試合のうち、パ主催の9試合でDHが採用された。この結果をもって、判断はできないが、セ6チームのDHに対する考え方が浮き彫りになった。
 DHに入った打者(代打も含める)の成績をみると、球団別の打率では①中日.382②阪神.371③ロッテ.368④DeNA.324⑤オリックス.303⑤巨人.303-と上位6球団中4球団がセとなった。個人別でも①オースティン(DeNA).455②福留(中日).429③サンズ(阪神).400-と上位3人はセの打者だった(10打数以上)。オースティンは交流戦全体でも.386で4位、7本塁打はトップでチームを交流戦3位押し上げる立役者となった。まさにDH向きのタイプといえる。
 DHで起用された選手はセが32人。巨人、中日、広島が6人で手探り状態。今回セ躍進の象徴だった阪神ではサンズ、マルテの両外国人にベテラン糸井が名を連ね(全体で4人)、いずれも本塁打を放った。オースティンとともにDH向きに思えたのがサンズだ。左翼守備に就いた試合では、打率.277、1本塁打、4打点だが、DHでは.400、1本、6打点。猛虎は、日本シリーズ用に絶好の人材を見つけた?
中日はリーグ戦では代打要員の福留が4試合に先発、日本ハム戦では4安打をマークした。やや守備に不安のある外国人、ベテラン選手という定番のDH起用が、見事にはまったといえる。交流戦最下位に低迷した広島は鈴木誠、西川、松山の4番経験者を起用するも、打線爆発にはつながらなかった。DHへの慣れの問題もあるのだろうか。
一方、パは22人でリーグ戦の延長という感じだ。西武、日本ハムは2人。西武・栗山は8試合に先発した。優勝したオリックスは、ロメロを軸に、モヤ、ジョーンズの外国人と主砲の吉田正を組み合わせて、打線の核を形作っていた。首位争いをしている楽天はDHに関しては、広島とともに日本人が全打席務めたが、目立った活躍はなかった。
 21年交流戦は、DHが使えるパ本拠地ではパが25勝24敗6分けと僅かに優位に立ったが、ほぼ互角。セがもしシーズンでDHを採用するとなれば、交流戦のような臨時態勢ではなく、根本的なところから、見直さなければならない。それは次回に。(続)