◎野球の見方、楽しみ方ー(菅谷 齊=共同通信)

大谷翔平の試合が毎日のようにテレビで観戦できる。エンゼルスの地元、アナハイムのファンが大谷グッズを身に着けて自慢げに大谷の話をするところも放映してくれる。そのファンを見ると、家族連れに親子連れ、友人同士など実にフレンドリーで、勝負にこだわるガツガツしたところがない。
 球場内も実に朗らかで、一人一人が自由自在の応援を繰り広げている。それでいて投手が2ストライクに追い込むと、三振を期待して一斉に声が高まる。ファンとチームが一体になっており、ゲームを大いに楽しんでいるのが分かる。
 こんなシーンを見たことがある。雨が降ってきて試合が中断になった。しばらくすると母親がバッグからTシャツを出して子供に着替えさせている。大リーグは基本的には止むまで待つ。時には1時間どころか2時間も平気で再開を待っている。雨を見込んで着替えのシャツを用意してきたのであって、いかに野球を楽しみにしているかを見た。ファンは慣れたもので、その間、それぞれ別の楽しみ方をしている。
 日本は大分異なる。たとえば外野席。応援団が陣取っている。指揮者がいて一斉に声を張り上げる。まさしく日本流だ。団体日本、個人大リーグの図である。試合が終了してもすぐ帰らない。応援歌なのか歌っている。このシーンも米国にはない日本の楽しみ方で、中にはこれでストレスを解放しているファンもいるのだろう。ひいきチームが負けてストレスを背負って家路につくファンも日本にはいそうである。
 長嶋茂雄、王貞治がばりばりのころの出来事である。試合が終盤に入り、ONの打席が終わると、ファンが帰り始めることが多かった。二人のバッティングがいかに入場料に見合っていたか明快だった。長嶋の絵になるプレー、一本足王の豪快なホームラン。まさにスーパースターだった。
 ファンの行動は、そのときのプロ野球の写し絵である。入場料を払っていただける相手、と見てはいけない。ファンが来なかったら球界は干上がってしまう。(了)