「大リーグ ヨコから目線」(29)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎オールスターの楽しさ、楽しみ方
▽40年ぶり開催に100億円
プロ野球は6月19日に開幕。大リーグは7月4日前後とようやく日米で公式戦が動き出す。
ただ、残念なのは、日米でオールスター戦が中止になることだ(日本7月19、20日。米国7月14日)。日本では1951年に始まってから初めて。米国では1933年にスタートして2度目(45年に第二次世界大戦で中止)だ。
 今年の大リーグの球宴は、ロサンゼルスのドジャースタジアムで開催されることになっていた。
この球場は62年に約2200万ドル(当時のレートで約79億2000万円)の巨費と2年7か月の年月をかけて完成した。1階のクラブハウスから9階のスカイ・バー・レストランまでの九階建て。当時としては超近代的スタジアムだった。現在、使用されているメジャーチームの球場としては3番目に古い。
80年以来40年ぶりの開催に向け、ドジャーズは約1億ドル(約108億円)をかけて球場の改造を行ってきた。昨年7月には「LA ALL STAR GAME 2020」のロゴも発表。準備万端整えてきただけに、関係者やファンの気持ちは察してあまりある。
 私は現役時代、何度も取材をしたが、昨年、久しぶりにクリーブランド・インディアンズの本拠地プログレッシブ・フィールドでの球宴(7月9日)に出かけ、改めてその楽しさを味わった。
市内のそこかしこに球宴のフラッグが飾られ、球場の回りにはオールスターグッズを売る露店が出る。各種イベントや往年の名選手のサイン会、トークショーが行われる「ファンフェスティバル」は球宴の5日前から市内のコンベンションホールで開催(30ドル)。会場ではスポンサーから無料で配布されるトートバッグ、サングラス、リストバンド、洗剤などをもらうのも楽しい。
6日にはホールそばの野外会場で人気バンドのザ・キラーズのコンサートが行われた。ボーカルはちょいワル風のイケメン。ステージ前は若い女性が総立ち声援。野球とはちょっと趣の違う熱気に包まれていた。
▽スポンジのグラブでホームランキャッチ!?
 7日はスタジアムで往年のスター選手、米女子ソフトボールの五輪代表や映画、テレビのタレントなどが出場するソフトボールの「オールスター・セレブリティ」と将来を期待される若手による「フューチャーズゲーム」が行われる。その日の夜には「オールスター サマー バッシュ」と言われるパーティーが開かれた。市内の名所である「ロックの殿堂」で行われ、飲み物や食べ物はすべて無料だ。こちらも着飾った大勢の人で溢れていたが、スポンサーや地元の有力者や球界関係者などが招待されるようだ。
 球宴前日の8日はホームランダービーで球場は盛り上がる。両リーグから選ばれたパワー自慢が一定の時間の中で本塁打の数を争う。米国のファンはこのイベントが大好き。チケットも本番並みに高い。
ちなみに私は左中間の比較的前の方の席だったが、値段は305ドルだった。この日ばかりは沢山ボールが飛んで来る外野席が特等席のようである。ファンはグラブ持参だが、席にはスポンジのグラブが置いてある。私は残念ながらホームランボールをキャッチできなかった。
そして球宴当日、ロックバンドの大音響のライブ。スタジアム一杯に星条旗が広がるオープニングショー。そして監督、コーチ、選手が一人一人紹介され、場内の盛り上がりは最高潮に達する。私の席は内野席のやや後方で340ドルだった。思い出しても気持ちが昂る。
すでに来年はアトランタ・ブレーブスの本拠地サントラスト・パークでの開催が発表になっている。東京五輪のように今年のオールスターが1年繰り延べされるのか、それとも再来年に延期になるのか、地元ファンも気が気でないだろう。(了)