「野球とともにスポーツの内と外」-(佐藤彰雄=スポーツニッポン)
◎エッ? 公開サイン盗み?
MLB(米大リーグ機構)が、その屋台骨を揺るがしかねない不祥事を起こしたのは今年(2020年)1月のことでした。
そうです。次々に明らかになった「サイン盗み」事件ですね。
アストロズが球団史上初の世界一に輝いた17年から翌18年シーズンにかけて、サイン盗みをしていたことが内部告発で発覚。調査を進めたMLBの処分とともに球団もジェフ・ルーノー前GMとA・J・ヒンチ前監督を解雇するに至りました。
同球団のサイン盗みの手法は、外野に設置したビデオカメラで相手捕手のサインを盗み、ゴミ箱を叩くことで打者に球種を伝えたとのことです。ゴミ箱を叩くという、どうにも“ドロ臭い”やり方には笑ってしまいますが、やったことは極めて悪質でした。
▽悪質なサイン盗み
ちなみに17年のワールドシリーズでは、第3戦と第7戦の2試合に登板したドジャースのダルビッシュ有投手が、ともに打ち込まれました。
騒ぎはこれだけで収まらず、今度はレッドソックスが、アレックス・コーラ監督に対して、ベンチコーチを務めていたアストロズ時代にサイン盗みを行っていたのでは? との疑惑が生じ、解任するに至っています。
次から次へと疑惑が発覚、泥沼の様相は、ファンを裏切る重~い出来事-。
さて…日本は? こちらはファンを笑わせる軽~い出来事です。
▽静寂の中に響く“実況の声”
今年6月21日、神宮球場で行われたヤクルト-中日戦。中日が3-0のリード保って8回の攻撃を終えた後、中日の与田監督が、
「オイオイ、あれを何とかしてくれよ」
と審判にクレームをつけました。
同監督が問題にした“あれ”とは、スタンドの放送席で試合を実況するアナウンサーの声。つまり「捕手が(内角に)寄った」などの声が聞こえてきて「ありゃ、拙いのでは?」ということでした。
日本のプロ野球は6月19日、3カ月遅れで無観客ながら待望の開幕にこぎつけました。打球音が聞こえていい、捕球音も迫力がある、などファンは無観客にあっても好意的に受け止めましたが、思っても見なかったことが静寂の中に響く“実況の声”だったわけです。
珍騒動を受けて神宮球場は急きょ、放送席に透明シートの仕切りを張るなど応急処置を施すことになりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止がもたらした「公開サイン盗み?」は、MLBの深刻さと違い、腹も立たない笑い話となりました。(了)