第33回 野球〜キャッチボール〜- (島田 健=日本経済)
◎昭和の香りたっぷり
▽ボールに託す女性の悲しみ
「約束もない日曜日 少し汚れたガラス窓から 少年たちのキャッチボールを ぼんやりみつめてる」「強すぎればつかめない 弱すぎれば届かない まるで人生そのもの」
人生を野球に例えるのはよくあるが、「父さん 私が男だったら 野球を教えてと言ったのに 女だから女だから いつも背中をながめていた」「父さん 私が男だったら 女を 泣かせやしないのに 女だから 女だから膝を抱きしめ 泣いている」
唄うのは女性の悲しさである。
▽中身は演歌
フォーク調で歌われるが、中身は演歌と言っていい。「少し汚れたガラス窓」などは昭和時代の匂いがする。1998年(平成10)年にキム・ヨンジャのアルバム「歌いつづけて…」に提供されたこの曲は作詞田久保真見、作曲浜圭介。
だが、注目されたのは浜が歌手として2011年に自らカバーしてCDシングルを出してからだろう。A面は99年に森進一、桂銀淑の競作で話題になった「昭和最後の秋のこと」(作曲浜圭介)。その出だしは「貧しさもつらくない 四畳半にも夢がある」で、まさに昭和を懐かしむかのような歌詞だ。
阿久悠が作詞して浜に贈ったそうだ。
▽キャッチボールも遺物?
野球の基本と言われるキャッチボール。「相手の胸に向けてまっすぐ」とよく言われたものだが、最近あまり目にしなくなった。ボールが他人に当たると怪我させかねないと、禁止している公園が多いからだ。
ネットには「キャッチボールができる公園」というサイトがある。できないところがそれだけ多いのだろう。三角ベースだけでなく、キャッチボールも昭和の遺物になりつつあるのかもしれない。
▽プロ野球選手会の取り組み
日本プロ野球選手会では野球の原点をアピールしようと、06年からキャッチボールプロジェクトをスタートさせた。各種イベントを催し、その楽しさを紹介するDVDも制作した。
当たっても怪我しない弾性を持ちながら、縫い目があってグローブへの手応えもある「ゆうボール」の制作にも手を貸している。また9人のチームで2分間に何度できるかというキャッチボールクラシックを開催している。
昭和が思い出になるのは当然だが、野球が思い出でにならないよう日本プロ野球機構(NPB)を含めて普及活動に励んでもらいたい。検索は「浜圭介 野球〜キャッチボール〜」(了)