「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」-(山田 收=報知)
第7回 セはDH制にどう向き合ったか①
前回、次はDH制を採用しないセ・リーグの論理を考察する、と予告したが、11月のエポックな出来事からまず紹介したい。
今年、2020年の日本シリーズは、特異なシーズンの流れを受けて、いつもとは違う様相を呈した。今回のみの特例として、全試合でDH制を採用したのである。阪神と西武が相まみえた1985年以来、35年ぶりのことだ。この年から隔年でDH制を採用し、87年からはパの本拠地のみでDH制を実施する方式となった(不採用は86年のみ)。ちなみに85年は、弘田澄男を2番・DHで起用した阪神が4勝2敗で優勝した。
今回は、ソフトバンク・工藤公康監督からの提案を巨人・原辰徳監督が受け入れた形となった。単純に考えれば、普段の野球ができるホークスに対し、交流戦もなく、相手の土俵で戦うジャイアンツにはハンデがあると思われた。
「有利、不利とかは度外視して、選手の安全や時間短縮であったり、スリリングな野球をするとか、野球界を発展させる部分において、一歩踏み出す必要があるだろうということ」
と、原監督は目の前の大勝負より、将来的な球界をも見据えた決断だと言った。
1年前の日本シリーズでソフトバンクに4連敗と完膚なきまでに叩きのめされた後、
「セ・リーグもDH制の採用を」
と強く主張。20年1月の監督会議でも具体的な提案をした原監督にとって、言行一致の結論でもあったのだろう。ファンの喜ぶ野球、切れ目のない打線とそれを抑え込む投手との力の対決を見せたい、という原監督の思いが伝わってくる。
同時にセ・リーグを代表する監督として、19年まで直近10年間の日本シリーズで、パが9勝(うちホークスが6度)セが1勝(ジャイアンツ)と圧倒的にパ高セ低の球界勢力図を塗り替えたい、という思いもあったのだろう。
結果は御存じの通り、2年連続4連敗でホークスの牙城を崩せなかった。巨人は、日本シリーズ9連敗。セ球団もパ本拠地では21連敗、言い換えればDH制の試合では13年の楽天・巨人第7戦から全く勝てなかった。
もちろん敗因がDHだけにあるわけではないが、より攻撃的なパの野球がセを凌駕していることだけは認めざるを得ない。付け加えるなら、その攻撃的な野球でもまれたホークスの投手陣の力強い投球の前に、巨人打線があまりにひ弱に見えた。
次回、改めてセがDHにどう向き合ってきたかを考えてみようと思う。(続)