第36回 私を球場に連れて行って-(島田 健=日本経済)

◎米国一番の野球の唄
▽セブンス・イニング・ストレッチ
米大リーグでは7回表が終了すると、この曲がかかり、ゲストが唄ったり、伴奏に合わせて大合唱したりする。日本でもかける球場が多いが、米国野球ファンで知らない人はいないほどの有名曲である。
セブンス・イニング・ストレッチは座り続けて固まった身体をほぐす意味だが、1910年(明治43年)の公式戦開幕戦で当時のタフト大統領が、7回本拠地チームの攻撃の前に、立って背伸びをしたのをファンが、真似しこの唄を唄ったのが嚆矢とされている。
▽作ったのは野球知らず
1908年、当時作詞家として活動していたジャック・ノーワースは次の曲のアイデアを考えながら地下鉄に乗っていた。窓外で見たのが、「今日試合あり、ポログラウンド」という看板。そこで歌詞を思いつき、目的地に着くまでに持っていた封筒の裏に書きつけたと言われる。
作曲はコンビを組んだことのあるアルバート・フォン・ティルザーに頼んだ。驚くべきは、2人とも野球のルールを理解しているファンでなかったことだ。ノーワースが初めて球場に足を運んだのは32年後、ティルザーは20年後だったそうだ。
▽球場で歌うのは合唱部分
とっくに著作権は切れているので、球場で歌うサビ(合唱部分)だけでなく全体の歌詞を拙訳で紹介しよう。1927年バージョンもあるが、オリジナルの方である。 
 ケイティ・ケイシーは野球が大好き
 多すぎるほどの情熱を捧げていた
 ひたすらホームチームを応援するために
 有り金全部を注ぎ込んだ
 ある土曜日、ボーイフレンドが
 ショーを見に行かないかと誘ったが、答えはノー
 あなたがすべき事を教えてあげるわ
  私を球場に連れて行って
  みんなと一緒にね
  ピーナッツやクラッカージャックを買ってね
  帰れなくても気にしない
  私にホームチームを応援させて
  もしチームか負けたら残念だけれど
  ワン、ツー、スリーストライクでアウト
  それが野球っていうもんでしょ
 ケイティ・ケイシーは試合の全てを見た
 選手たちのファーストネームも把握していた
 審判には「誤審だ」と試合中、高らかに力強く言い渡す
スコアが2-2になった時
 ケイティ・ケイシーは何をすべきか知っていた
 選手たちを燃え上がらすためのやり方を
 彼女はこの唄を応援団に唄わせたのだ
(合唱部繰り返し)
検索は「Take me out to the ball game」(了)