◎ワールドシリーズ出場の価値(菅谷 齊=共同通信)

「ワールドシリーズでプレーしたい」
 大リーガーたちは必ずそう言う。大リーグの最強を決める戦いこそ、彼らの最大の望みなのである。そこに個人記録よりはるかかに高価な価値がうかがえる。
 現在、大リーグはナ、アとも15球団ずつ。ワールドシリーズに出場する確率は15分の1という狭き門で、そこで勝てば30球団のNO1となる。頂点に立ったときの感動は、それこそ達成した者のまさに特典といえよう。
 このワールドシリーズ出場の選手で最高の位置に君臨している選手がいるのがヤンキースのジョー・ディマジオである。実働13シーズンで11度出場し、9度もチームの勝利に貢献したところから“大リーグの至宝”と呼ばれている。至宝とは「この上なく貴重な宝」といった意味から分かるように、史上最高のレジェンドなのである。ディマジオの側近から「国際行事にかかわるパーティのとき、ホワイトハウスのチャーター機がジョーが住むフロリダまで迎えに来るんだ」という話を聞いたことがあった。
 ディマジオは通算1399試合、2214安打、361本塁打、1537打点、打率3割2分5厘。1941年に不滅の56試合連続安打を作ったことで知られる。全盛時代の43年から3シーズンを兵役(第2次世界大戦)のため犠牲にしたため、この数字となった。引退後に女優のマリリン・モンローと結婚、新婚旅行で来日している。
 日本人大リーガーで特筆したいのはディマジオの後輩にあたる松井秀喜である。巨人、ヤンキースといった日米最高のチームで4番を打ち、ワールドシリーズでMVPを獲得したことは素晴らしい一語に尽きる。日本シリーズでもMVPになっている。長嶋茂雄や王貞治の夢を実現した打撃人だった。
 個人記録でフィーバーしている大谷翔平は間違いなくワールドシリーズ出場を最大の目標にしていることだろう。だからこそ勝てるドジャースに移ったはずである。優勝リングを手にすることができるか。(了)