「野球とともにスポーツの内と外」-(佐藤 彰雄=スポーツニツポン)

◎「日本の午前」がジャックされた
 在宅ワークが一段落した後のひと休みは、やはりテレビでしょうか。なかなか収束が見えないコロナ禍にあって外出が制約され、ステイホームを強いられる中、情報収集の道具のひとつとしてテレビは身近です。
 そんな中で「午前中のテレビ」の在り方が変わりつつあります。これまで朝のテレビなど“時計代わり”だったのが、今や野球ファンだけでなく多くの人々がテレビの前に腰を据えるようになりました。
なぜって? 
大谷翔平(26)の存在が形を変えているのですよ。MLBを生中継してくれている「NHK BS1」が午前8時、あるいは午前10時にエンゼルスの試合を放送し始めるや、朝食の後片づけをしていると、主婦層までが「大谷クン、打った?」と熱い視線を画面に向けてくるですから…。
▽主婦も「大谷クン、打った?
 何しろ6月25日(日本時間同26日)の対レイズ戦などは、テレビが午前8時に放送を開始すると、その途端に「1番DH」がいきなり、138メートル弾24号を放り込むのですから、観(み)る側も手抜きできず、放送開始の5分前くらいからテレビのスイッチを入れておかなければ、その瞬間を見逃してしまいます。それゆえの午前中のテレビの変革-。
 先日、プロボクシングWBA世界バンタム級スーパー&IBF世界同級正規王者の井上尚弥(28=大橋)の防衛戦がラスベガス(米ネバダ州)で開催されました。相手はIBF世界同級1位のマイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)です。結果は井上が、もはや1位選手など眼中になく、左ボディー攻勢で3回2分45秒TKOで圧勝しました。
▽求められているものに応える
 この試合、井上に求められていたものは、勝利はもちろんですが、どんな勝ち方をするか、という期待でした。井上自身「求められているものは分かっている」という重圧がかる中で期待通りの結果を出しました。それが出来ることはスーパースターと呼ばれる人たちの大事な要素です。
 さて…これまで午前中のテレビなど番組としてはさしたる内容もなかった時間帯にファンを集めるようになったのは、観れば何かをやってくれるという期待、求めているものに応えてくれる大谷サマへの尊敬でしょう。確かに打つ、走る、ときには守る…その一挙手一投足は観ていて心躍らせます。
 観る側の「午前中のテレビ」の変革は、逆に言うなら大谷の「日本の午前中ジャック」です。大谷にしろ井上にしろ、そういうことが出来る日本人が出てきたことは、当たり前ではなく凄いことですね。(了)