「野球とともにスポーツの内と外」(34)―(佐藤 彰雄=スポーツニッポン)

◎スポーツ新時代の目的意識
 北京冬季五輪が閉幕(2月20日)しました。昨年(2021年)夏の東京大会。今冬の北京大会。五輪2大会を観(み)てアスリートたちが4年に1度の勝負に懸ける目的意識が、これまでとは大きく変わってきたことに気づきます。
 「国のために」あるいは「メダル獲得のために」がこれまでだったでしょうか。それらが結果としてついてくれば、もちろんそれに越したことはないでしょう。が、それより選手個々のモチベーションが、五輪という大舞台にあって「自分がどうありたいか」を自分自身に問う形に変化しつつあることを強く感じます。
▽「自分がどうありたいか」に挑む
 スピードスケート女子で超人的な5種目(計7レース)にチャレンジした高木美帆(27)はその代表でしょう。五輪開催中、テレビのコメンテーターを務めた1998年長野大会のスビードスケート女子500メートル銅メダリスト・岡崎朋美さんは、そのチャレンジを「ボルトが1万メートルを走るようなもの」と形容。常人の成せる業ではない、と伝えていました。
 高木美帆が言う「今、あるものを超えたい。可能性があるならチャレンジしたい」という個のモチベーションは、フィギュアスケート男子の羽生結弦(27)が、メダルを度外視して誰も成し得ていない「クワッドアクセル」(4回転半ジャンプ)に挑んだことにも通じます。さらにスノーボード女子のビッグエアで岩渕麗楽(20)が、転倒こそしたものの前人未到の「縦3回転」に挑んだことも…。
▽若手に期待したい「既成の打破」
 さてプロ野球に目を転じれば、MLBで“二刀流”の活躍を見せる大谷翔平(27)は、上記の勇気あるアスリートたちと並ぶ「可能性へのチャレンジ」を実践している選手です。私たちは彼のしていることを“別格”として観てきましたが、五輪での例を含めて、あるいはスポーツ各界は、無難にこなして安泰を得るこれまでの“当たり前”の時代から「何をやったか」の新時代に移行しているのかもしれませんね。
 「今、あるものを超える」ということは“既成の打破”を意味し「新しい段階に入る」ということです。BIGBOSSの登場も、これまでにないワクワク・ドキドキ感を覚えますが、そうした可能性を持つ選手がいるか、と聞かれれば、私はロッテの佐々木朗希投手に注目してみたいですね。3年目を迎える21歳。160キロ超えの剛速球と変化球で奪三振ショーを繰り広げる“令和の怪物クン”が「何かをやってくれる」期待は大ですね。もう一人はヤクルトの奥川恭伸投手。こちらも3年目の21歳。さらに球界を代表する第一人者となったオリックスの24歳・山本由伸投手。彼らには「今、自分がやりたいこと」を“わがまま”に通して突き進んで行ってもらいたいと思います。(了)