「いつか来た記者道」(47) - (露久保孝一=産経)

◎新聞は選手を動かすカミ様だ
 プロ野球選手にとって、ペナントレース中、もっとも気になるのは成績である。試合に出場して積み重ねている自分の成績は、良いか悪いか、リーグの中でどのくらいに位置するか、知りたいのである。試合数が多くなると、正確な数字がすぐに出てこない場合もある。投手の勝ち負け、打者の本塁打数はすぐわかるが、防御率や打率は計算しないと数字は出ない。それを知るための手っ取り早い方法は、新聞を見ることである。
 新聞でもスポーツ紙は、詳しく掲載されている。投手なら、「両リーグ投手全成績」として規定投球回数達成者の防御率が1位から順番に掲載されている。ここ数年、条件をクリアした投手は各リーグ10人弱しかいない。他にセーブベスト5,ホールドポイントベスト5もある。打者は、「両リーグ打撃全成績」が規定打席到達者の打率トップから載っている。各リーグ上位30人が載るが、条件を満たしている打者が30人に満たないシーズンもある。
▽新聞の信頼度はマスコミで一番
 投手、野手はこれらの数字を見て、自分の状態を認識する。成績上位なら、「よしっ、このままいくぞ」「もっと上へいこう」などとさらに気合を入れる。成績が悪ければ、「こんな成績じゃだめだ」「どこが悪いのかな」と反省し、体調、技術をチェックして軌道修正する。新聞は、選手にとって“好不調を映す鏡”なのである。
つまり、新聞とは「自分の活躍を世に知らせてくれる、まさに『かみさま(紙様)』だね」(パのホームラン打者)という価値を感じたり、また叱咤激励してくれる刺激剤であるのだ。いつも身近にある頼りになる存在は、他にそうはない。新聞は、正確な記録はもちろんのこと、試合展開、ヒーロー描写など読者に受ける記事も多く載せている。新聞には、電波と違って印刷物として残り、いつでも見られるという利便性がある。それをスクラップやノートに貼って残すことができるので、選手の家庭では夫人が夫の活躍や成績の載った新聞記事をせっせとスクラップすることに努めている。
 その新聞は近年、テレビに加えインターネットの普及により、購読者が減少している。しかしながら、マスコミの中で、新聞の信頼度は首位をキープしている。日本新聞協会は2022年1月20日に、新聞の情報の信頼性が各種メディアの中で最も高いと発表した。これは21年秋に15~79歳の男女1200人を対象とした調査の結果で、メディアの信頼度は新聞が47・1%で1位、次いでテレビが36・7%、インターネットは18・0%だった。情報の正確度においても、新聞は47・5%でトップ。続いてテレビの35・6%、インターネット15・5%となった。
▽教養高め漢字を学べるいい教材
 新聞は、新型コロナウイルス流行前の19年調査と比較して、読んだり見たりする時間が増えていることが調査でわかった。1日平均の新聞閲覧時間は、平日で3・3分増えて25・2分だった。休日は2・6分増の28・1分。新聞協会は、新聞社発の情報に対する関心は高まっているとして、社会における新聞の価値をさらに高めることをめざしている。インターネットの情報では、新聞社提供のものが一番信頼性が高いという調査結果が出ている。
 プロ野球選手にとって、自分の活躍の記事や記録を見る以外に、新聞には他の利用価値も多くある。スポーツ全般、国内外の政治、経済、社会事件、行事、観光レジャーや芸能、読書に関する読み物もある。監督や選手からは「新聞は教養を高めるいい教材だ」「世の中のことがよくわかっていい」「漢字や言葉の勉強ができて便利だ」という声が聞かれる。
 プロ野球を担当する新聞、通信記者は、いつでも事実に基づいて記事を書くことを心がけている。一般読者、野球ファンとともに、プロ野球選手の顔も思い浮かべながら記事を作成している。信頼され、愛されるジャーナリストをめざし、選手にとりあすへの発奮材料になるよう影のサポーターになっているのである。(続)