第53回 六甲おろし(島田 健=日本経済)

◎中村鋭一アナのおかげ
▽12球団最古の応援歌
阪神ファンはもちろんご存知のように「六甲おろし」は通称で、「阪神タイガースの歌」が正式名称である。1935(昭和10)年に大阪タイガースは発足したが、翌年には応援歌として、「大阪タイガースの歌」が発表された。作詞は「赤城の子守唄」などのヒット曲でも有名な詩人の佐藤惣之助、作曲は既にスポーツの応援歌の作者として定評を得つつあった古関裕而である。
現行の球団歌としては12球団最古である。作詞作曲ともにトップクラスの2人を起用できたのは社会人野球の日本のコロムビアから阪神入りした若林忠志の人脈を生かしたものと言われている。61年に球団名が「阪神タイガース」に変更されると、応援歌も名前とリフレインの大阪の部分が「阪神」に変更された。
▽ラジオで熱唱
詞は格調高く、リズムは快い。古関裕而の代表歌の一つでもある名曲だが、現在に至るような大人気になったのは朝日放送(ABC)のラジオ「おはようパーソナリティ中村鋭一です」という番組のおかげだと言われている。滋賀県生まれの中村は大のタイガースファンと公言し、阪神が勝った翌日には番組で必ず「阪神タイガースの歌」を熱唱した。番組は71年から中村が政界に進出した77年まで続き、歌う伝統は番組の後継者にも受け継がれた。
この番組の人気もあって関西一円での認知率が上がり、阪神が21年ぶりの優勝を果たした85年には全国区にもなった。「六甲おろし」の通称も中村が言い始めたそうで、分かり易い名称は日本の隅々まで浸透していった。中村は17年、87歳でこの世を去ったが、出棺の際はこの唄の合唱で送り出されたそうだ。
▽全3番
古い唄だから、歌詞は著作権の保護期間が過ぎた。3番まで全部記してみた。全部覚えている人もたくさんいるに違いない。
一番 六甲颪(おろし)に 颯爽と
   蒼天翔ける 日輪の
   青春の覇気 美(うるわ)しく
   輝く我が名ぞ 阪神タイガース
   オウ オウ オウオウ 阪神タイガース
   フレ フレフレフレ
二番 闘志溌剌 起(た)つや今
   熱血既に 敵を衝(つ)く
   獣王の意気 高らかに
   無敵の我等ぞ 阪神タイガース
   (繰り返し)
三番 鉄腕強打 幾千度(いくちたび)
   鍛えてここに 甲子園
   勝利に燃ゆる 栄冠は
   輝く我等ぞ 阪神タイガース
   (繰り返し)
検索は「阪神タイガースの歌」、「六甲おろし」。(了)