第56回 スイート・キャロライン(島田 健=日本経済)
◎ノリの良さが決めて
▽往年のヒット曲
ニール・ダイアモンドが1969(昭和44)年に発表したこの唄はシングルで百万枚を超える大ヒットになったが、歌詞の内容はキャロラインという女性への思いを淡々と綴ったもので劇的なものはほとんどない。そんな唄が今やボストン・レッドソックスの定番となり、アメフトやサッカーやラグビーなどでも、流され合唱されたりしているのは、ひたすらのりのよい曲にあると言われている。少しずつ盛り上がってサビの繰り返しで声を張り上げて会場が一つに、なる。
▽鶴のひと声
スポーツ界でもてはやされるようになったのは、やはりレッドソックスがフェンウェイ球場で8回表終了後の定番曲に採用してからだろう。大リーグ公式サイトの記事によると、97年に球場の音楽担当が「知り合いにキャロラインと名付けられてた子供が生まれた」という個人的理由で取り上げられて以来、時々流されていたそうだ。それが02年に就任したチャールズ・スタインバーグ副社長の「毎晩かけたい、それも8回表終了後に」というひと声で決まったそうだ。
▽ケネディ家
07年にダイアモンドは「カトリック教徒初の合衆国大統領となったジョン・F・ケネディの長女で69年当時11歳だったキャロライン・ケネディ(13−16年、駐日大使)からインスパイアーされたもの」と打ち明け、同年彼女の50歳の誕生日に眼前で唄ったそうだ。ダイアモンドはフェンウェイも大事にしていて、13年にはボストンマラソン爆弾テロ事件のあと、球場で観客と共に唄って哀悼の念を明らかにした。18年にパーキンソン病のため、引退を発表したが、22年6月には久しぶりに球場に姿を見せて唄ったそうだ。
▽南沙織もカバー
NFLのカロライナ・パンサーズなど様々なチームの応援歌になっているが、多くの大物アーティストにカバーされている唄でもある。フランク・シナトラ、エルヴィス・プレスリー、フリオ・イグレシアスとは豪華。日本では加山雄三や南沙織が歌っていたそう。記者時代、何度かフェンウェイに足を運んだが、主にテレビ画面を見る取材で人気球場の観客席の興奮を一度も味わえなかった。チケットが取りにくい球場ではあるか、できればグリーンモンスター(左翼の巨大フェンス)の上の席でビール片手に唄ってみたい。検索は「Sweet Caroline」(了)