「野球とともにスポーツの内と外」(40)-(佐藤 彰雄=スポーツニッポン)
◎プロ野球選手と産休
8月25日付新聞各紙の「MLB」情報欄に小さいスペースながらちょっと目を引く記事が掲載されました。内容を要約すると-。
〈パドレスのダルビッシュ有投手(36)がツイッターを更新し妊娠中だった妻で元レスリング世界女王の山本聖子さんが長男を出産したことを報告した。(略)ダルビッシュは「父親リスト」に入り、8月24日(日本時間同25日)のガーディアンズ戦の先発回避が決まった〉
▽“産休は当然”のカルチャー・ギャップ
フ~ン、ヘエ~、そうか…という小さな驚き。今の時代、認識不足だったなァ。プロ野球選手も愛妻の出産に際して「産休」を取ることが出来るんだ、というカルチャー・ギャップです。さっそく資料をひもといてみると、MLBは2011年に産休制度にあたる「父親リスト」を導入。選手が出産する妻への立ち合い、あるいは産後のケアを申し入れた場合、24時間から72時間、チームからの一時離脱が許可される、とありました。
なるほど…こうした制度はやはり、アメリカ社会の“家族の在り方”によって成り立つものものなのでしょう。プロ野球選手であれば、家族の援護があってこその選手生活。仕事と家族を秤(はかり)にかけりゃ、家族が重たい男の世界、ということになるのでしょう。
日本のプロ野球界で夫人の出産に際しての産休、選手の一時離脱はあまり耳にしません。制度があるのかないのか、あるいはあっても、つい遠慮が先立ってしまい言い出しにくいのが日本社会にある暗黙の自主規制なのかもしれません。つまり、仕事と家族を秤にかけりゃ、仕事が重たい男の世界、です。
▽家族あっての選手という考え方
産休に関して私には苦い記憶があります。デスク時代のある日、若い記者から産休を打診されました。新聞記者稼業は、なかなか週休2日どころか公休の消化もままならない日々です。そんな時代、あまり聞いたこともない男の産休の申し入れです。私自身、妻の2度にわたる出産に立ち会っておらず、そこでつい、言葉が荒くなり、周囲から「それ以上言ったらダメ」といさめられる、後味の悪い出来事となりました。
ときは流れて今、街中に幼児をあやす「イクメン」の姿が多く見られるようになってきました。「男女雇用機会均等法」や「育児休業等に関する法律」が事業者に徹底され、日本にも新しい働き方が求められるようになりました。
MLBが制度化している「パタニティ・リスト(父親リスト)」にビックリしているようではダメですね。日本プロ野球界の現状では、おそらく産休が取りにくい状況にあるのではないかと思いますが、産休を取ることが当たり前になるようなシステムづくりが必要のようですね。(了)