「野球とともにスポーツの内と外」(47)-(佐藤 彰雄=スポーツニッポン)

◎ネックは「親の高望み」
 日本列島を興奮の渦に巻き込んだWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の熱狂。2009年の第2回大会以来、14年ぶり(3大会ぶり)3度目の優勝を飾った日本代表「侍ジャパン」が示し与えてくれた激闘と感動は、もはや「野球」というスポーツの1枠を超えて社会現象化したものでした。
 メディアの過熱報道もあってか国民総野球ファン化。それは大会を中継するテレビの視聴率(関東地区=数字はビデオリサーチ調べ)が証明してくれます。1次ラウンド4試合を含む全7試合の平均視聴率が40%超え。優勝を決めた決勝の米国戦が、平日の午前にも関わらず平均42・2%。最高はテレビ朝日が放送した準々決勝のイタリア戦(3月16日=東京ドーム)で実に48・0%。これはWBCの中継では過去最高-。
▽国民総野球ファン化現象
 ちなみに関東地区の視聴率は「1%=約17万4000世帯」と言われています。48%であれば約835万2000世帯。試合開始の午後7時に家族4人がテレビに見入ったとして約3340万8000人。
全国ともなれば…。列島大興奮! は決してオーバーな表現ではないでしょう。
 最高の盛り上がりを受けて立役者の大谷翔平投手(28=MLBエンゼルス)と信じる力を貫いた栗山英樹監督(61)が、同じような思いを口にしました。「次の世代の子供たちが“ボクらもああなりたい”と思ってくれれば幸せです」と。
▽親は黙って見守ろう
 以前の話です。宮里3兄妹をプロゴルファーとして世に出した父親・優さんの元に将来の藍ちゃんを夢見る多くの卵たちが集まりました。優さんは子供たちに、球がどこに飛ぼうが空振りしようが問題にせず、まず自由に楽しくクラブを振ることを教えます。こうした初期の指導に対して“急ぎ過ぎる”親たちは「早く藍ちゃんのようにしてほしい」と口を出すのですね。
 優さんが言いました。
「指導の過程において“親の高望み”が最大のネックですね。子供たちにとってそれがプレッシャーになり、苦痛になり、やがてゴルフが嫌いになってしまう。最初はノビノビと楽しんで…なのにネ」
野球も同様でしょう。多くの子供たちが「侍ジャパン」のカッコ良さに憧れ“ボクもああなりたい”と思うことでしょう。親たちは、くれぐれも欲目で子供たちの夢を潰してしまわないよう口を閉ざして見守りましょう。(了)