◎時代をつくるホームラン(菅谷 齊=共同通信)

ベーブ・ルースが特大ホームランをかっ飛ばしたことで大リーグの人気は爆発的なスポーツとなった。その後、ロジャー・マリスがシーズン61本塁打を放ち、ハンク・アーロンが通算715本とルースの記録を抜くたびに、球界は盛り上がった。
さらにアーロンが通算755本まで伸ばし、シーズン73本と打ちまくったバリー・ボンズは通算762本まで積み重ね、ともに一時代を築いた。ジャイアンツの本拠球場右翼場外の湾にボートを浮かべてボンズの打球を待ち構えるファンが続出したものである。
昨年もヤンキースのアーロン・ジャッジが量産して話題を集めた。今年は大谷翔平がア・リーグを独走するアーチを重ね、出場し続ければ50本突破の可能性は高い。二刀流という看板で“大谷時代”を築いた選手として球史に1ページを印すことになるだろう。
日本のプロ野球もホームランが時代をつくり、野球人気の隆盛をもたらした。戦後、リーグ戦が再開して間もなくホームラン時代がやってきた。小鶴誠(松竹)が51本塁打を放ち、空前のブームを巻き起こした。飛ぶボールの代名詞となった“ラビッドボール時代”である。 
野村克也のあと、王貞治の全盛時代がやってきた。シーズン55本塁打、ルースとアーロンの記録を次々と抜き、なんと868本まで伸ばした。途中、アーロンに挑んだときの“756ブーム”は球史にトップクラスの出来事を記した。
2022年、ヤクルトの村上宗隆がシーズン56本塁打をマーク。三冠王も兼ねて最近にない高い関心を集めた。村上時代の到来か、と期待されている。その絶対条件は少なくとも5年連続本塁打のタイトルを手にすることだろう。(了)