「たそがれ野球ノート」(4)-(小林 秀一=共同通信)
◎ペットと野球観戦
この夏、念願のエスコンフィールド北海道行きを果たした。必ず聞かれるのは「北広島駅」との往復の具合なので、前もって言っておくと、往きはすぐ来るシャトルバス。帰りは八回終了時に退出して、バスも余裕があったが、タクシー利用で楽々千円だった。
開場前に現地到着。周辺施設をひと通り回ったあとゲートをくぐった(このワクワク感、いくつになっても変わりません)。壮大なガラス壁、左右の大型ビジョンが迎えてくれる。広島のマツダスタジアムが既成の空間をガラッと変えたことを思い浮かべたが、エスコンはマツダをひと回り大きくしたスケール。日本ハムー楽天戦はほぼそっちのけで、上層、下層の通路を歩き回って見学させてもらった。
ホテル、温泉・サウナ、展望レストランといった広く伝えられている施設は置いておいて、印象に残ったことをいくつか報告させていただく。
まずは車椅子席の多さが目立ったこと。内外野通路のグラウンドサイドの随所に設けられ、東京ドームなどと比べると出入りの幅が広く、同行者のスペースも十分に確保されていた。無料で貸し出される電動車椅子も目を引いた。
驚いたのは、動物同伴の観覧席。板で囲われた人工芝のスペースには椅子とテーブルが置かれ、犬小屋まである念の入れよう。家族を自宅からそっくり運んでくるという発想だろう。球場外にはドッグランのスペースもあった。
外野通路の後方はお祭りの縁日のようだった。射的や輪投げから綿あめの売店などが軒を並べ、親子連れが列をつくっていた。どこでも壁には大きなモニター画面が備えられ試合の展開を伝えている。その周辺には人工芝が敷かれた広いスペースがあり、子供が走り回り、お年寄りは足を延ばしていた。さすがにほかの球場では見たことのない光景だった。
「スタジアムは野球を楽しむところ。邪道だね」なんて、ひと昔前の反応なのだろう。老若男女(ペットまでも)だれもが楽しみに来場し、そこそこのお金を落としていくビジネスモデルは確立されている。
観客動員を上げる条件は、優勝争いできるチーム力の整備かアイドル選手の登場ーこんな球団経営の定説は、歴史にしまい込まれたのだな、と強く感じた。(了)