「記録の交差点」(9)-(山田 收=報知)

◎第9回 中村剛也(西武)④
 現役最高のホームランバッターは現在、通算471本塁打。現役2位の中田翔(中日)に168本差をつけて“独走”状態である。本塁打王のタイトル獲得は、2008年(46本)、09年(48本)、11年(48本)、12年(27本)、14年(34本)、15年(37本)の6度。面白いことに、2年連続キングを3回達成している、10年と13年に獲っていれば、6年連続だったのに…。本塁打王15度の王は別格として、9度の野村という偉大な打者2人に次ぐ単独3位の座を占めている。
 2024年8月には41歳を迎える中村だが、コンディションを保てれば、9年ぶりのキングも夢ではない、と見る。23年のパ・リーグ本塁打王争いを思い出してほしい。最終的には、26本で、グレゴリー・ポランコ(ロッテ)、近藤健介(ソフトバンク)、浅村栄斗(楽天)の3人で分け合った。ポランコは125試合、近藤・浅村は143試合フル出場しての結果だ。
 この26本での本塁打王は、1959年、自身初のキングとなった山内和弘(大毎)の25本以来となる少数での達成だった。ちなみに、パ・リーグの少数本塁打王は①23本 中西太(58年・西鉄=126試合)②25本 深見安博(52年・西鉄、東急=108試合)②25本 山内和弘(112試合)④26本 大下弘(51年・東急=89試合)となっており、2023年の3人は、リーグ史上4位タイの少ない本数でのタイトル獲得だった。
 付け加えると、6位は、中村が2012年に記録した27本(123試合)だった。それにしても、51年の大下は89試合で、この年リーグ唯一の20本台をマークしていることには驚く。ニックネームとなった「ポンちゃん」らしくポン、ポンとオーバーフェンスを連発していたのだろう。話が横道にそれたが、少数本塁打シーズンが続けば、中村にとっては、あと29本に迫っている通算500本塁打と合わせて、ダブル快挙達成のチャンスが見えてくる。
 そんなシーズンの楽しみへの参考材料を探してみた。中村はどんな状況でホームランを打っているのか。471本塁打をボールカウント(ボール―ストライク)別に整理してみると、多い順に①初球 82②1-1 57③2-2 53④3-2 49④1-0 49⑥2-1 40⑥0-1 40⑧1-2 38⑨2-0 31⑩3-1 19⑪0-2 7⑫3-0 6 となっている。
 意外にも初球がトップだ。相手バッテリーの入り方を熟知しているのだろうか。同時に決め打ちというか、思い切りの良さを感じる。ホームラン打者相手だと、様子見で入ってくると思われるが、そんなバッテリー心理を読み切っているのだろうか。2位、3位には、勝負所と言われる平行カウントからの一発が続く。言ってみれば、相手の組み立てを読み、勝負球に強いということかもしれない。
 0ストライクでは168本(35.67%)、1ストライク後は156本(33.12%)、2ストライク後は147本(31.21%)と、追い込まれても、打てる強みを持っている。それだけ、常に本塁打を狙い、打ちに行っているのだろう。
 次回はそんな中村に相応しい、もう一つの記録について取り上げようと思う。
=記録は23年シーズン終了時点=(続)