「大リーグ ヨコから目線」(21)-(荻野通久=日刊ゲンダイ)

◎2020年代は中国大リーガー選手の時代?

▽「マイナーリーグに7人」

 大リーグにはさまざまな国から選手が参加しているのはよく知られている。
 2019年の30球団の開幕ロースター884選手中、28・5パーセンが
米国以外の国籍の選手。その数は2か国と地域で251選手だった。最多はド
ミニカで102人。次いでベネズエラ68人、キューバ19人…。
 日本は田中将大、ダルビッシュ有、前田健太、大谷翔平、平野佳寿、菊池雄
星の6人で6位だった。
 中南米諸国の選手の多いのは変らないだろうが、アジアに関してはこの勢力図が将来は変るのではないか、と今年の夏、アメリカへ行って関係者といろいろと話をして、そう思った。中国人大リーガーが増えるのではないかと。
 MLB(メジャーリーグ機構)の関係者に会ったとき、中国の同事務所の人を紹介された。まだ20代と若く、アメリカのカルフォルニア州のUCLAに留学。英語もペラペラでMLBに職を得て、今は北京の事務所で働いているという。
 「今、メジャーリーグには中国人のプレーヤーはいません。でも、マイナーには7人もいるのです。これからもっと増えると思います」
 という。それで根拠を聞いてみた。
 「中国で野球をやっている人口は北京でも約10万人です。これからもっと人気が出てくると思います。チームは約200あり、各世代に別れてトーナメントが行われています」
 中国で人気のあるスポーツといえば、バスケットボール、サッカー、卓球がベスト3だそうだ。野球の人気はまだ遠く及ばないが、大リーグの試合がテレビで1日2ゲームも見られるとのこと。そうした環境で大リーグや選手に興味や親しみを覚える世代が増えているようだ。野球は道具などでカネのかかるスポーツだが、国が豊かになればそうした問題も徐々に解消されてこよう。

▽「一番人気は大谷翔平」

 「実は日本人のメジャーリーガーも中国では人気があります。1番はやはり大谷翔平(エンゼルス)。それから今年引退したイチローも人気があります」
 今年、MLBは3月に日本、4月にメキシコ、6月にイギリスと3か国で公式戦を開催した。来年もイギリスとプエルトリコで公式戦を行う。MLBはベースボールを世界に広める活動を積極的に行っているがその一環だ。
 そして選手の育成や発掘を含めて、人口も多く、開拓の余地のある中国を大きな市場と見ているようだ。北京に事務所を置いているのもそのためだろう。
 そうした背景を含めて、オークランド・アスレチックスの編成担当に中国選手の可能性について聞いてみた。
 「ウチの球団には中国人選手がいないので、現時点ではハッキリしたことはまだ何とも言えないよ。関心がない?そんなことはないけど、今、アジアで一番、関心のある選手はササキ(佐々木朗希=岩手・大船渡高)だよ。彼はプロ野球に行くのかい?」
 しばらくは日本人選手への関心が薄れる心配はなさそうだが…。(了)