「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」-(山田 收=報知)

第8回 セはDH制にどう向き合ったか②
 DH制に対するセ・リーグのスタンスを論じる前に、再び興味深い出来事が起きたことに触れたい。2020年12月14日のセ理事会。巨人・山口寿一オーナー名で、21年シーズンのDH制暫定導入を要望する文書が提出されたのだ。プロ野球最高議決機関のオーナー会議ではなく、理事会にオーナーでの提案書が出されることは異例だ。
 提案の理由に、
①コロナ禍の中で、投手の負担軽減を図る
②チーム強化につながる
③プロ野球ならではのスリリングな試合提供
を挙げている。
当の山口オーナーは後日、その真意を問われ、
「あくまで来年(21年)に限って、DHを導入すべきではないか、ということ。新型コロナウイルス対策の点から検討していただきたいと考えた」
と“時限立法”であることを強調。
「これを口実として、なし崩しにDH制導入するとかを考えているわけではない」
と、巨人による強引なルール変更に対する各球団の警戒感に配慮。そういう意図のないことを明言した。
 すでに原辰徳監督からは、セ・パの格差解消、スリリングな試合をファンに提供することなどを目指してのDH導入が提案されている。現場とは一線を画しているという山口オーナーの意向とは違って、巨人が現場、フロント一体となった“DH攻勢”と受け止めた向きもあったのだろう。
結局、賛同したのは中日だけとみられ、提案は見送られた。
 山口プランの提案理由の中で、コロナ禍ならではのものは①だけだと思う。過密日程が予想される21年も、20年同様多くの対策を取りながらのシーズンになる。投手の負担軽減は納得できる。
②、③についてはDH制導入本来のメリットであり、コロナ禍とは無関係だ。来季の限定導入ではなく、来季からの変更という提案の方がすっきりする。
 それをしないのは、セ各球団にはびこる根強い「DH反対」の声を十分に理解しているからだろう。
実は1975年のパ・リーグDH採用の2年前に行われたセ・リーグ監督会議で、すでに話題になっていたという。当クラブ理事でもある報知新聞・蛭間豊章記者によると、当時の三原脩(ヤクルト)、金田正泰(阪神)、青田昇(大洋各監督が、DH制採用に賛成の意を表明したという。
逆に、この時点でパ・リーグでは「現状では疑問がある」と積極的ではなかったといわれる。
 2年後に立場が逆転。パがDH制で先行するとセは反対に回る。今回の理事会では「今後も議論する」と引き取ったが、DHノーの意志は根深いとみる。(続)