「野球とともにスポーツの内と外」-(佐藤 彰雄=スポーツニッポン)

◎エッ? 大谷? 会社員?
 海の向こうのMLBでは、エンゼルス4年目の大谷翔平投手(26)が、オープン戦ながら投げては160キロ超え、打っては柵越え連発と絶好調。冴える“二刀流”に現地メジャーリーガーをして「な、何だ、アイツは! ヤツは異常だよ」とお手上げ、完全脱帽させています。
他方、MLB6年目、ツインズの前田健太投手(32)は、初の開幕投手に向けて気合を入れ、パドレスのダルビッシュ有投手(34)も4年ぶり2度目となる開幕投手の指名を受けて好調です。
 世界を舞台に日本人選手の活躍。ボール・パークに夢を馳せる少年たちは、いいなァ、凄いなァ、ボクもああなりたいなァ、ねえねえパパ! Take Me Out to the Ball Game(ボクを野球に連れてって)胸を焦がす熱い憧憬、夢を見させてくれるヒーローたちへの尊敬の念…。
 と、まあ、これが“これまでの”少年たちでした。いいですか。“これまでの”ですよ。
▽会社員になりたい
 生命保険会社の「第一生命保険」がこのほど、全国の小学生(3~6年生)、中学生、高校生を対象(計3000人)に実施したアンケート「大人になったらなりたいもの」(2020年12月実施)の結果を発表しました。ちなみに同社では、1989年からこのアンケートを実施しており、今回で第32回になるとのことでした。
 それぞれのベスト3を掲載させて頂くと-。
【小学生】▼男子①会社員(8・8%)②ユーチューバー(8・4%)③サッカー選手(7・6%)▼女子①パティシエ(14・1%)②教師・教員(7・1%)③幼稚園の先生・保育士(6・0%)
【中学生】▼男子①会社員(18・3%)②ITエンジニア・プログラマー(6・8%)③公務員(5・7%)▼女子①会社員(13・6%)②公務員(7・8%)③看護師(6・9%)
【高校生】▼男子①会社員(22・2%)②ITエンジニア・プログラマー(11・5%)③公務員(10・5%)▼女子①会社員(20・0%)②公務員(9・4%)③看護師(7・4%)
 -となっています。
 いや~興味深いですね。小・中・高校生とも男子の「なりたい職業」のナンバーワンは「会社員」ですよ。以前なら上記のように野球選手、あるいはサッカー選手など華やかなプロスポーツ選手に憧れを抱いたことと思いますが、今や地道に「会社員」を選択。それを選んだ理由は、まず「好きだから」があり、その後に「カッコいい」「収入が良さそう」などが続いています。
▽求めたい安定性
 ちなみに「スポーツ選手」(すべて男子)については【野球】が小⑤(6・4%)中⑩(2・3%)高⑧(2・3%)。【サッカー】は小が③に入りました(上記参照)が、中は⑦(4・2%)高⑥(2・3%)となりました。
いずれも「会社員」のカッコ良さ、収入の良さ(良さそう)の前にプロスポーツ選手が後塵を拝しています。
 目に止めたいのは中・高の女子がいずれも3位にランクさせた「看護師」の職業です。小学生女子は6位。その理由を「誰かの役に立ちたい」としており、これもコロナ禍により、病院が苦戦を強いられることを反映させてのものかもしれません。
 子供たちは、コロナ禍によって、それぞれが置かれた立場、変わる環境を現実的に、しっかりした目で見ている一方、自粛や我慢を強いるリモート社会が“夢”を奪ってしまっているような感じもします。別に「会社員」が見る夢に値しないというわけではありませんが、やはり、子供たちがそろって“地道な安定性”を選択したところに若干の寂しさを感じないでもありません。   (了)