第63回「ホームラン」(島田 健=日本経済)

◎まるでガキ
▽ブルハの野球唄
1987(昭和62)年にシングル「リンダリンダ」でメジャーデビューしたザ・ブルー・ハーツ(通称ブルハ)が91年に、アルバム「ハイ・キックス」で発表したこの曲は少年野球の世界そのものと言っていい。
「野球をやりにいこうよ 河川敷のグランドへ」「得意の魔球でこい 時速千キロの豪速球 俺には見えるぜ」「甘い球が来たら 銀河系のその彼方まで かっとばしてやる」「となりのグランドではガキどもが熱くなってる」
微笑ましいほどである。
▽マーシーの世界
作詞作曲はリードギターの真島昌利(62年生まれ、通称マーシー)。聞くところによると相当な野球ファンらしい。ただし、選手としてのエピソードはあまり無い。
小学生の時に野球にハマり中学生になったら野球一筋で行くと思ったそうだが、進学したら学校に野球部がなかったそうだ。選択ミスではある。
だが、そのおかげでギターに出会い、中学校の文化祭で、人前でのデビューを果たすことになるのだから、ミュージシャン真島としては間違いではなかったようだ。
▽巨人ファン
真島は東京都で生まれ育ったからか大の巨人ファン。多感な頃に長嶋茂雄や王貞治選手を応援した世代で、唄の最後に「(ガキの中に)21世紀の金田(正一)や ONがいるぞ」と締めている。
もっとも15年のこの曲を紹介するブルハ好きのブログに、「金田は400勝投手、ONは長嶋と王を示す」と説明しているのには驚いた。もうみんな過去の人なのだ。18年のラジオでは頭角を表してきた岡本和真に対して「王、長嶋の系譜に繋がる選手」と評価している。
▽続編もある
ブルハは95年に解散したが、真島はザ・ハイ・ロウズ時代には01年に「夏の朝にはキャッチボールを」をリリースした。
「夏の朝にキャッチボールを 寝ぼけたままナチュラルハイで 宇宙史上 最高の時 幸せになるのには別に誰の許可もいらない」
相変わらず表現はオーバーだが、野球の素晴らしさをやっぱり描こうとしている。06年からはザ・クロマニヨンズなどで活動している。巨人・岡本も活躍した23年3月のワールド・ベースボール・クラシックの優勝を踏まえてまた、何か野球の唄を作ってくれると有難い。
検索は「ブルーハーツ ホームラン」(了)