「大リーグ ヨコから目線」(荻野通久=日刊ゲンダイ)
◎オールスターの思い出 (1)
今年の大リーグのオールスターは7月17日(日本時間18日)、ワシントン・ナショナルズの本拠地ナショナルズ・パークで行われる。ファン投票も開始され、二刀流の大谷翔平(エンゼルス)は指名打者で登録されている。今の調子をキープすれば、ファン投票あるいは監督推薦での出場は可能性があるだろう。
私は何度か、大リーグの球宴の取材に行った。試合のことは毎回、テレビで放映されるので今回は趣向を変えて報道陣の食事について触れてみたい。
▽無料のランチボックス
球宴には米国内はもちろん世界各国から数百人の記者が取材に集まる。普段の試合では報道陣はプレス用食堂で10ドル前後のお金を払って食事を取るが、オールスター戦ではとても賄い切れない。そこで試合当日とその前日のホームランダービーの日は特別な昼食、夕食が用意されることがある。
報道陣にランチボックスが配られたのが2008年のニューヨーク・ヤンキースの本拠地ヤンキースタジアム、翌09年にセントルイス・カージナルスの本拠地ブッシュ・スタジアムで開催された球宴。ランチボックスの中身はサンドイッチ、またはハンバーガー、サラダ、果物、スナック菓子などだ。ランチボックスの受け取りスペースに行き、プレスのIDを見せると渡してくれる。無料である。
ヤンキースタジアムでは受け取ったときに、プレスIDにパンチを入れられた。
「何のためにそんなことをするのか?」
と係員に尋ねたら、
「ランチボックスは1人1個。1人で何個ももらいにくるのがいるから」
私には十分過ぎる量だったが、体格のいい、あるいは大食漢の中には1個では物足りない記者もいよう。それで何食わぬ顔をして何度も取りに来たら、ランチボックスが不足する。それでそんな対策を立てたようだ。
▽ミールカードの配布
13年のニューヨーク・メッツの本拠地シティ・フィールドでは、報道受付でIDカードと一緒に銀行のキャッシュカードのようなものを渡された。
「これは何に使うのか?」
と聞くと、
「プレス用の食堂で使うミールカードだ」
との答え。
シティ・フィールドでは左翼席に特別なプレス用の食堂が設けられていた。そこに行くとテーブルに様々な料理が並んでいる。レジがあったので担当者にIDカードを示すと、
「ミールカードを見せてくれ」
仕組みを聞くと
「ミールカードには一定の金額が入金されている。その範囲ならいくら食べても無料だが、オーバーしたら自分で払え」
とのこと。ビッフェスタイルだが、食事をする度に皿とコップを渡された。それで食事1回とカウントされる。
ミールカードの具体的な許容金額は忘れたが、幸い、範囲内の出費で収まった。もっとも余ったからといって、ミールカードをレジに持っていっても、残り金額は返してくれない。
飲み物は原則フリー。コーヒー、ミネラルウオーター、ジュース、コーラなどが大きな冷蔵庫やアイスボックスで冷やされている。ただ、ヤンキースのオースルターでは試合は延長になった。時計も夜中の12時を回り、このときはさすがに冷蔵庫の冷たい飲み物も底をついた。(了)