第4回 なんと申しましょうか、胴上げは私が最初です(露久保孝一=産経)

▽胴上げ第1号は松竹の小西監督

プロ野球のペナントレースは終盤に入ると、両リーグの優勝チームが見えてくる。2017年はセが広島、パはソフトバンクが制覇した。今年も、間もなく優勝の監督胴上げが見られそうだ。胴上げは、有終の美の「儀式」、激闘のシーズンを乗り切りチャンピオンの座を射止めたチームとファンの感激の一瞬である。

毎年、優勝の日に見られるこのおなじみの胴上げシーンは、日本プロ野球がスタートした時からあったのだろうか。

最近、読んだ本によれば、最初に行ったのは松竹ロビンスだった。50(昭和25)年である。松竹は2リーグ制導入初年度のこの年、小西得郎監督が、小鶴誠を中心とした「水爆打線」を率いて快進撃。秋も深まる11月10日、セ・リーグ初優勝を決め小西監督が胴上げされた。小柄な小西の身体が、選手によって宙にあがった。これが、プロ野球史上初めての胴上げとなった。

▽孫子の代までプロ野球監督はやらせない

しかし、小西は日本シリーズで毎日オリオンズに負けると、田村駒次郎オーナーと意見が対立し辞任した。この時、小西は「孫子の代までプロ野球の監督だけはやらせない」と名セリフを残した。

小西は55年、NHKラジオで解説者に就く。胴上げに続き、解説者でもプロ野球第1号になった。江戸っ子弁での解説では「まぁ、なんと申しましょうか」というソフトな小西節が受け、野球を知らない人も口ずさむ流行語になった。

この小西は71年に野球殿堂入りした。松竹は50年から3年存続した後、53年に大洋ホエールズと対等合併し、大洋松竹ロビンスを結成した。

小西のプロ初の胴上げから68年たった2018年の胴上げは、どの監督になるか。

昨年セ・リーグを制した広島は、9月18日に緒方孝市監督が敵地・甲子園で優勝胴上げをなんと11度も宙に舞うという感動に浸った。しかし、クライマックスシリーズで3位の横浜DeNAベイスターズに敗北し、日本シリーズ進出を逃してしまった。日本シリーズはソフトバンクがDeNAを下した。工藤公康監督が日本一の感激を宙に舞って味わった。

今年のセ、パ両リーグの覇者がどのチームになるか、日本シリーズ進出とその戦いはどうなるか。球界での「いつか来た道」は、このコラムでも熱く伝えられるような面白いドラマを生んでくれるはずだ。(了)