プロ野球に熱い憧憬があった頃-(佐藤彰雄=スポーツニツポン)

▽巻き返して1位になった野球

ときの流れとともにかつてあった価値観は、変わったり多様化したりして、ひとつのモノサシが“絶対”にならないことは仕方のないことでしょう。
 ①野球選手・監督など②サッカー選手・監督など…⑨バスケットボール選手・コーチ
 これは「日本FP(ファイナンシャル・プランナー)協会」が今春発表した、小学生を対象に行った「将来なりたい職業」の男子の部ランキングでトップ10に入ったスポーツ分野です。
 調査を行った「日本FP協会」の解説によると、1位となった「野球選手・監督など」は、前年1位だった「サッカー選手・監督など」から巻き返し、順位を入れ替えたとのことでした。
 その原動力として…MLBで今季は打者として活躍するエンゼルスの“二刀流”大谷翔平投手の存在などがテレビを通して、近くにいて“憧れの選手”となり得ていることが大きいようです。
 面白いものですね。野球人気の低迷、それに代わるサッカー人気の急騰、などが昨今の傾向と言われても、日本の男子児童にとって野球というスポーツは、いつの時代も憧れの対象としてトップに位置づけられているのですね。

▽「紅梅キャラメル」を通して膨らんだ夢

私が小学生だった1950年代、遊び仲間たちは学校を終えた後、小遣いを握りしめて近くにあった駄菓子店に集まり「紅梅キャラメル」(発売元=東京紅梅製菓)を買うのが常でした。
 別にこのミルクキャラメルが特別においしいとかではなく、お目当てはおまけにつけられているプロ野球・巨人軍選手のカードでした。
 水原監督がいてあの川上哲治、千葉茂ら…外野手には与那嶺要、青田昇、南村不可止(後に侑広)、投手には別所毅彦…とてつもないスター軍団だった巨人軍選手の名前は皆、紅梅キャラメルを通して覚え、あの頃の小学生たちは、まさに「野球は巨人、キャラメルは紅梅」のキャッチコピーに躍らされ、親に小遣いをねだっていました。

▽熱狂を取り戻したい

だからといって将来、プロ野球選手になった、などという話は、私の周辺にはありませんでしたが、ボクもああなりたい、と憧れる選手がいるスポーツ分野が底辺を広げることは確かですね。
 野球と肩を並べる人気スポーツのサッカー界には「レアル・マドリード」入り(現在「マジョルカ」に期限付き移籍)で注目を集める日本代表MF久保健英(18)がいて、彼の存在はサッカー少年たちの心を十分に刺激しているでしょうし、またベスト10内の9位に浮上したバスケットボールは、NBAのドラフト1位で「ウィザーズ」に入団した八村塁(21)の影響は大きいでしょう。テニス界に出現した16歳・望月慎太郎も、十分に憧れの対象になることでしょうね。
 野球離れなどと言われている中、少年たちが依然、野球に熱い視線を向けているなら、あるいはその先が予備軍の佐々木朗希投手(大船戸高3年)たちになら、頂点に立つプロ野球界も、少年たちの憧憬に応えるべく精いっぱい、頑張らなければなりません。(了)