第28回「ミスター・ロンリー」-(島田健=日本経済)

◎ファンサービスのお約束
▽ジェットストリーム
 この曲といえば、ラジオのTOKYO FM(旧エフエム東京)の長寿番組、ジェットストリームのオープニング曲として有名だ。同番組はFM実験放送(1967=昭和42年)から数えると52年以上続き、日本FM放送の長寿記録を日々更新している。
日本航空の提供だから、機長と呼ばれるパーソナリティは27年間務めて亡くなった初代の城達也さんから、4代目伊武雅刀、5代目大沢たかおを経て、20年3月31日からは俳優で歌手の福山雅治が深夜零時開始の名物番組を操縦している。
▽孤独な兵士の嘆き
 米国のポップス歌手、ボビー・ヴィントンが64年にシングルリリースするや、全米チャート1位に輝いた大ヒット曲だが、恋の歌ではない。
「寂しい 僕はミスターロンリー 僕の他は誰もいない 電話する相手がいたらなあ」「僕はただの兵士 孤独な兵士だ 希望もないまま 故郷から離れている 家に帰れたらなあ」
手紙も来ないし電話する相手もいない。若い兵士の嘆きを切々として訴える。メロディーが美しい名曲だが、さてどうして野球に関係するのか。
▽キスカム
 米大リーグなどでは大スクリーンを利用して様々なファンサービスを企画している。ダンスコンテストは日本でも横浜球場などで見られる。
観客をカメラでクローズアップするサービスを○○カム(camera)というが、カップルを画面に写してキスを求めるのがキスカムである。生活習慣が日本とはかなり異なる米国では、何とほとんどのカップルが求めに応じてキスをする。  
照れ隠しに持っているビールのカップに口づけする男女もいるが、ユーチューブのキスカム特集を見るとオバマ元大統領などセレブも応じている。
▽一人見の男性
 キスカムが大いに盛り上がったところで、最後に何故かカメラは一人で見にきている男性客を写す。そこでお待ちかねのミスター・ロンリーが流される。映された男性は手を振ってはにかむしかないのは当然だろう。
筆者は07年にブレーブスの当時の本拠地、ターナーフィールドで初めて見て、あまりのタイミングと曲想の一致に感心した覚えがある。筆者のランキングではかなり上位に来る野球の唄である。検索は「ミスター・ロンリー ボビー・ヴィントン」(了)