「野球とともにスポーツの内と外」-(佐藤彰雄=スポーツニツポン)

◎ブランクから見えてくるもの〉
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)でスポーツ各界も動きを止めてしまいました。「3密(密閉・密集・密接)をすべて満たしてしまうイベントであれば仕方のないことです。
開幕の見通しが依然、立たない国内プロ野球界も苦渋の日々です。NPB(日本野球機構)は、先に12球団代表者会議をオンラインで開き、終了後の会見で斉藤惇コミッショナーは「緊急事態宣言が解除されない限り(試合の)開催は難しい」とし、状況次第では「無観客も視野に入れて…」と話しました。
プロスポーツの無観客イベントは、基本的にありえないことですが、プロ野球はやはり、国民的スポーツとしての位置づけがあり、財政的な問題があるにしても“まず開催”という重い責任を背負っての苦渋の選択肢を感じます。
▽“国民的スポーツ”としての責任
ところで…実戦からの離脱を余儀なくされている選手たちは、このブランクをどう受け止めているでしょうか。
以前のことです。プロボクシングの元WBC世界スーパーライト級王者・浜田剛史氏(現・帝拳ジム代表)にブランクについて聞いたことがありました。浜田氏は現役時代、強打ゆえに左拳を痛め、約2年間のブランクを余儀なくされた経験を持っています。
-ブランクをどう過ごしていたのですか?
浜田氏「私は2年1カ月のブランクがあったとき、途中、試合が組まれては流れるということもあって、決まれば戦える臨戦態勢は取っていました。それでも試合勘に微妙な違いが生じていましたね」
▽渦の外から中を見る
-ブランクに効用を見い出す、としたら…。
浜田氏「ボクシングを一度、外から見た後に成功するという例は結構あるんですね。戦いの渦の中にいたのでは見えなかった自分以外の周りが見えてくるということですね。これは大きいですよ」
-大事なことは?
浜田氏「無目的に過ごしてはダメですね。要は何に気づき、それに向けた目的意識を持つことでしょう」
WBA世界ミドル級王者・村田諒太(帝拳)も、大事なこの時期、防衛戦の見通しが立っていません。彼は「今はスポーツ界がどうとか言っている場合ではないでしょう」と現状を冷静に見つめながら「リセットするにはいい機会」と言いました。
プロ野球選手にしてもプロボクサーにしても、あるいはブランクを余儀なくされているスポーツ各界のアスリートにしても、再開のときにワンランク、レベルを上げていたら面白いですね。(了)