「大リーグ ヨコから目線」(43)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)
◎ジュニアの時代はまだまだ続く
▽ドラフトでも二世選手が続々指名
今年の大リーグのドラフトは7月12日(現地)から2日間、オールスター戦の行われたコロラド州デンバーで開催された。そのドラフトで一人の注目選手が全体2番目でレンジャースから指名された。バンダービルド大のエース、ジャック・ライターだ。
ジャックは最速155㌔の速球が武器の右投げの本格派。大学時代、110イニングで179奪三振の数字を残したが、その父、アルはメッツなどで162勝を挙げた投手だった。大リーグのHPにも両親と指名を喜ぶ動画が掲載されるなど、大きな話題になっていたことがうかがえる。
今年のメジャーリーグでは二世選手が大活躍している。ウラジミール・ゲレーロJr(ブルージェイズ 打率328、32本塁打、80打点)、フェルナンド・タティスJr(パドレス 打率293、31本塁打、69打点)、ロナルド・アクーニャJr(ブレーブス 打率283、24本塁打、52打点)などだ。いずれも父親がメジャーやマイナーの選手だ。さらにマイケル・ブラントリー(アストロズ 打率326、6本塁打、35打点)の父はマリナーズで活躍したあと、巨人でのプレーしたミッキーの息子だ。
ケン・グリフィーJr、バリー・ボンズなど二世選手が活躍した例は過去にもあるが、これほどまとまって話題になるのは初めてだ。プロ野球では父親を上回る成績を収めたのは黒田博樹(元広島 父親一博は元南海=現ソフトバンク外野手)くらい。長嶋茂雄ジュニアの一茂も野村克也ジュニアの克則も期待に応えられなかった。選手個々の能力もあるだろうが、環境も影響しているのではないか。
▽子供をグラウンド に、メジャーの文化
先日のメジャーの球宴でも多くの選手がグラウンドに子供を連れてきていた。実際、私が取材したオールスターでもC・Cサバシア、ホルヘ・ポサダ(ともにヤンキース)が子供にユニホームを着せて、グラウンドで遊ばせていた。その子供にチームメイトが優しく打撃指導をするのも目撃したこともある。小さい頃から野球に親しみ、また偉大な選手に教わることで、知らずにモチベーションも上がるはずだ。マリナーズ時代の佐々木主浩も子供を球場に連れてきていたと聞いた。また、往年の名選手が子供たちを集めてのベースボールキャンプの広告も全米各地の地元紙でよく見た。
中日、阪神、楽天の3球団をリーグ優勝に導いた星野仙一監督は「グランドは戦場だ!」とよく言っていた。要するに女、子供の来るところではない、ということだろう。今ではこうした考え方は薄れているのかもしれないが、かつてはプロ野球とアマチャア球界が対立。プロ野球OBの父が息子に野球を指導できない時代もあった。
ジャック・ライターの他にも今年のドラフトではダーレン・ベーカー内野手(父ダスティ―は現アストロズ監督)が全体293番目でナショナルズに、ウィル・ワーグナー内野手(父ビリーは元アストロズ、メジャー通算225セーブ)が538番名でアストロズに指名された。今回は漏れたが、他にもマーク・マクガイア(元カージナルス、通算538本塁打)やアンディ・ペティット(元ヤンキース、通算256勝)の息子もプロ入りを目指している。二世選手大活躍の時代はまだまだ続くだろう。(数字は現地7月27日現在)