「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」-(山田 收=報知)

第15回 DH制も進化する?
 今回も少し寄り道をする。いやあ、ビックリした。大谷翔平が、メジャーリーグを動かしてしまった。
2021年7月13日、コロラド州デンバーのクアーズ・フィールドで行われた米大リーグ・オールスター戦。大谷はファン投票でDH部門の1位となり初出場が決定した。さらに選手間投票の先発投手部門で5位に入り、これまた登板できることに。シーズン中、ツーウエイプレーヤーとして、全米を席巻しただけに、日米両メディアとも、「球宴でも二刀流」の大合唱だった。
 しかし、ルール上は投手とDHで同時出場はならない。ところが、これを認めさせてしまうMLBの柔軟性に敬意を表したい。
もともとア・リーグのキャッシュ監督(レイズ)は、大谷を「投げて打たせる」ことに大賛成で、エンゼルスのマドン監督にも事前に相談していたそうだ。「ずっと投打同時出場できるようにすべきと言ってきた。そのためにDHのルールを一部緩和しないといけない」というマドン監督の了解も得て、機構側と交渉し、実現にこじつけたのだ。
 100.2㍄(161㌔)の球を投げ、初速190㌔で500㌳(152㍍)の打球をかっ飛ばす選手だ。ヤンキースの主砲・ジャッジが「世代を超えた才能の持ち主」と大絶賛した。
1回表に「1番・DH」として打席に立ち、その裏には先発投手として、ナ・リーグ打線を3者凡退に抑え、勝利投手に。ベーブ・ルースも経験したことのない、球宴での投打同時出場を実現させた最大の力は「それが見たい」というファンの熱狂的な思いだろう。そのためには、ルールも変えていく。
 これは、大谷という特別な才能があってこそのストーリーだったが、ひとつの制度を変えていく姿勢は日本でも参考にしていいと思うのだ。DHルールを変化させていくことがあっていいのではないか。
もし、セ・リーグがDH制を採用する方向に動き出した場合は、オリジナルの制度に工夫をこらしていくこともあっていい。もちろん、パとも協議して同意を得ることを忘れてはならない。
 今年の4月頃と記憶しているが、アトランティック・リーグという米独立リーグで新たなDH制度を導入すると発表した。新制度では、先発投手が降板すると、DHに入っている打者に代打を出すか、リリーフ投手が打席に入るかのいずれかを選択する必要があるというものだ。同リーグと業務提携を結ぶMLBは「昨シーズン、先発投手の90%は7回未満しか投げてはおらず、このルールは先発投手の価値を高め、試合後半の戦略的要素を高めることにつながる」としている。
 先発投手と先発DHが連動することで、試合が面白くなるし、選手起用など戦術面も注目されるという訳だ。DH制が日本で採用されて、あと4年で50年になる。日本でも新たな制度を検討することもあってよいのではないか。(続)