野球とともにスポーツの内と外」-(佐藤 彰雄=スポーツニッポン)

◎中田翔の不祥事に思うこと
 野球好きの友人たちから中田翔内野手(32=日本ハム→巨人)の暴力事件に関する2通のメールが入って来ました。
いずれも、
「あの移籍だけどね。どう思う?」「プロ野球界、甘いネ~。あれでいいの?」という内容。
ファンをもあきれさせた今回の騒動を振り返って見ると…。
▽無期限出場停止処分
・発端=8月4日に北海道・函館で開催されたDeNAとのエキシビションマッチの試合前、中田がベンチ裏で同僚に暴行を働いた。試合開始後に事態を把握した球団は、中田を途中交代させ、札幌の自宅に強制帰宅させた。
 ・処分=8月11日、球団は、暴力行為が統一契約書に違反するとし全試合(1、2軍とも)の出場停止処分を科したことを発表。
 ・監督見解=8月14日、栗山監督がこの件について初めて言及。今期中の復帰は難しいとし、移籍の可能性も示唆。
 ・電撃移籍=8月20日、巨人が中田を無償トレードで獲得したことを発表。同月22日、早くもスタメンで試合出場、移籍後1号となる本塁打も放った。
 この経緯はすべて新聞報道によるものです。
中田の暴力事件に関して私は現場にいたわけではなく、これ以上も、これ以下も、つまり、こういうことが行われた背景などは分からず、ただ事実として認識できることは、中田は球団が厳しい処分を科さざるを得なかったほどの暴力という愚行を犯してしまった、ということでしょう。
であるなら“何か”が欠けていることを、友人たちのメール、あるいは多くのファンたちが指摘をしているわけです。
▽少年たちの夢を潰す愚行
 何が欠けているのか? つまり「禊(みそぎ)がないじゃないか」ということですね。
「禊」とは広辞苑に「身に罪、または穢(けが)れのあるとき、あるいは重大な神事などに従う前に川や海で身を清めること」とあります。愚行を社会的に糾弾され、そこからの復帰は、何ごとも「禊の期間」があって初めて、そうか、それなら、と周囲から認められるわけです。
8月11日処分決定→8月20日移籍、即スタメン出場? 誰もが、エッ、それはないでしょ、と思い、球団の姿勢にもNPBの対応にも疑問を残し、中田が「一から出直す」と言ったり、染めた金髪を元に戻したりすることにしても、そういう問題ではないでしょ、となるのは当たり前のことです。
 昨今のプロ野球界は、MLBで大活躍する“二刀流”の大谷翔平(エンゼルス)効果で少年たちは未来の大谷を目指して大きな夢を描き始めています。その矢先に…中田だけでなく取り巻く野球関係者の見通しの甘さは本当に一考を要しますね。(了)