「大リーグ ヨコから目線」(45)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎大谷翔平に英語は必要?
▽渦巻く称賛と怨嗟の声
 今年2021年のメジャーリーグは大谷翔平(エンゼルス)の年と言っても過言ではないだろう。
1918年のベーブ・ルース(当時レッドソックス、13勝、11本塁打)以来の2桁本塁打2桁勝利は来年に持ち越されたが、本塁打王のタイトルや数々の記録の達成で話題を一手に集めた。史上18人目の三冠王に挑戦したウラジミール・ゲレーロ・ジュニア(ブルージェイズ)の活躍を上回るインパクトを与え、人気を博しているのは米メディアやファンの反応からも明らかだ。
 それに比例するかのように、大谷に対する球審のストライク、ボールの判定、メディア関係者の発言などが度々話題となり、批判されたり、炎上したりした。差別や偏見ではないかと思われたからだろう。
そんな中、私が気になったのは7月12日の米スポーツ番組「ESPM」でのコメンテーターの発言だった。S・A・スミス氏が、
「通訳が必要な選手がメジャーリーグの顔となるにはどうなのか?」
と疑問を呈した。それに対して同僚のK・マックス氏は、
「大谷が英語を学ぶべきだと言いたいのであれば、私も同意見だ」
と応じた、と報じられた。
▽シーズン中に特別教室
「英語うんぬん」で言えば、以前、インディアンズのマイナーリーグでプレーした日本人選手にこんな話を聞いたことがあるからだ。
「自分が1Aでプレーをしていたとき、若い中南米選手を対象にした英語教室がキャンプ中やシーズン中に開かれていた。自分は片言ながら英語が喋れたので、出席する必要はなかったが、十代半ばのほとんど英語がわからない中南米出身選手は授業を受けていた」
 その日本人選手によると、授業は英語だけでなく、習慣やマナーなどアメリカで生活するのに必要な情報にも及んでいたそうだ。英語ができればアメリカ社会にも早く溶け込める。野球をプレーするにも役に立つ。
そんな考えから行われているのだろうが、同時に「ここで働くなら英語くらい話せ」という意識もその根底にあるのではないか。それがコメンテーターの先の発言になったのではないかと思う。
かつて米女子プロゴルフ協会に米女子ツアーでプレーする外国人選手に一定の英語力を求める動きもあった。
 大谷はエンゼルスに入団して4年。通訳がついている大谷の英語がどの程度なのかはわからない。ただ、大谷が活躍すればするほど、称賛も大きくなるが、やっかみも強くなろう。大谷にはそうした声を吹き飛ばす活躍を期待したい。(了)