「大リーグ見聞録」(48)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎メッツ新監督は広岡タイプ?
▽選考になんと2か月
 ニューヨーク・メッツの新監督が2021年暮れの12月20 日(現地)にやっと決まった。やっと、というのは決定までに2か月以上かかったからだ。新監督はヤンキースなど4球団で指揮を執り、最優秀監督を3度受賞したことのあるバック・ショオルター(65)だ。
実は03年か04年、当時、レンジャース監督だったショオルター監督と会ったことがある。オークランドでのアスレチックス対レンジャース戦の取材に行ったとき、村上雅則氏(評論家)と一緒に試合前に話を聞いた。
詳細は忘れてしまったが、厳しい指導者という印象だった。プロ野球で例えれば元ヤクルト、西武の広岡達朗監督か。MLBのホームページでも「old school Showwalter」と紹介されている。選手の自主性を重んじる今どきの「new school」タイプとは一線を画しているのだろう。
 それにしても長い選考期間だが、これには事情がある。
メッツは辞任したGMの後任を探す必要があった。監督人事はGMの大きな仕事だからだ。エプラー新GMが決まったのが昨年の11月15日。それから広く人材を求めて監督候補をリストアップ。球団は公にはしていないが、報道では6人の名前が挙がり、オンラインでの面談で3人に絞り、最終的にショオルターに白羽の矢が立った。
▽シーズン終わればサヨウナラ
名前が出ながら落選した人はがっかりしているだろうが、決してマイナスにはならない。リストアップされたことは、それだけ手腕を評価されていることになるからだ。
 シーズン終了と前後して新監督が決まる日本のプロ野球とは対照的だ。プロ野球では秋季キャンプやフェニックスリーグなど、来季に向けて秋からチームは始動する。新監督はそれに間に合うように決められる。日ハム新庄、ソフトバンク藤本、中日立浪の新監督も例外ではない。しかも3人がそうだったように、OBが対象になることが多いので候補者も限られる。
MLBは公式戦、あるいはポストシーズンゲームが終わればチームは解散だ。中南米出身選手の多くは国に帰る。アメリカに住む選手でも本拠地に自宅があるとは限らない。生まれ故郷に自宅のある選手もいれば、以前、所属したチームの都市に家を構える選手もいる。トレードやFA移籍が盛んで1球団で終える選手が少ない事情もあるからだろう。当然ながらプロ野球のような球団主催の納会や納会ゴルフはない。
アスレチックスもマイク・コッツェー監督が決まったのは昨年の12月21日だった。監督選びにも日米の考え方の違いがうかがえる。(了)