第48回 エンター•サンドマン-(島田 健=日本経済)

◎ファン熱狂の登場曲
▽ヘヴィメタの子守唄
メタリカといえば、1981(昭和56)年に誕生した米国のヘヴィメタルバンド。ギターを大音量でかき鳴らし、危険な言葉をシャウトするイメージだ。だが、91年リリースのこの曲は子供の目に砂を掛けて眠気を誘うというサンドマンをテーマにしたファンタスティックなもの。
「祈りの言葉を言いなさい 小さいおチビちゃん 我が子よ忘れてはいけない みんなのために祈るんだ いたずらしないで大人しくしていれば サンドマンがやってくる」
▽イントロが絶妙
現在の歌詞は「眠るときは片目を開けて」など不気味なものは少ないが、元々はもう少し過激で乳幼児突然死防止を訴える内容や、乳幼児の誘拐にも激しい反発を加えていたともいう。ソフトになった内容でも反響を呼んだのは見事なイントロだろう。
ギタリストのカーク•ハメットが作ったもので、まずギターのアルペジオ(コード音をを一音ずつ弾く)から始まって、ドラムが入ったところで今度はギターがコードをジャカジャカとかき鳴らす。
▽ヤンキース名物
多くの大リーグファンがご存じの通り、この曲はヤンキースの守護神、652セーブの最高記録を打ちたてたマリアーノ•リベラの登場曲だった。
相手チームに「お前たちはもう眠りの時間だ」とクローザーが引導を渡すわけで、歌詞内容もふさわしいが、ギターのアルペジオが始まっただけで、ヤンキースタジアムは勝利を確信した熱狂的なファンの拍手に包まれたものだ。
13年9月のリベラを讃える式典ではメタリカが同スタジアムでライブ演奏を披露した。
▽先達に習う
98年のワールドシリーズ(ヤンキース4ー0パドレス)でヤンキースの関係者が、相手球場でパドレスの守護神トレバー•ホフマンが登場曲の「Hells Bells」(AC/DC)と共に熱狂的に迎えられたことにヒントを得て選曲したそうだ。
リベラ自身はヘヴィメタに興味がなかったというのは面白い。ホフマンは主にチェンジアップで当時最高の601セーブをマークして殿堂入りを果たした。それをカットボールで塗り替えたリベラはホフマンの1年後の19年、投票率100%で栄光に輝いた。
2人とも登場曲も記憶に残る最高の守護神である。
検索は「Enter Sandman Metallica」(了)