「野球とともにスポーツの内と外」(35)―(佐藤 彰雄=スポーツニッポン)

◎「右脳の活性化」が野球を変える
 既にベテランの域に入ったプロゴルファーの片山晋呉(49)は、独自の工夫が光る選手です。特にしばしば見られる左構えの素振り。右利きの本人は当然、右構え、常に右に上げて左に振り下ろすスイングを日々、繰り返していますが、左構えの素振りについて「筋肉の動き、それを動かす脳を右構えのスイングだけに慣れさせたくない。左右のバランスを保つことで新たなイメージがわき、スイングのヒントを得られたりします」と話しています。
 そう言えば宮里3兄妹をプロゴルファーとして世に出した父親の優さん(75)は「静筋」という言葉を使いました。これは優さんの“造語”なのですが、体を動かす筋肉を「動筋」とするなら、静かな筋肉である「静筋」は、ジャッジメントする力、つまり、ゴルファーに最も大切な判断力を司る筋肉、としています。
▽「静筋」を鍛える
 「左脳」と「右脳」と言います。二つに分かれている人間の頭脳。左脳は言語で操作される意識脳、右脳はイメージで考え、記憶し、伝達する無意識脳、と言われます。片山プロも優さんも、目指していることは「右脳の活性化」なのですね。それが発想を豊かにします。
 さてプロ野球が開幕して“球春”らしくにぎやかになりました。その前のキャンプ、オープン戦で注目を集めたBIGBOSSこと日本ハムの新庄剛志監督。存在ばかりに視線が集まり、大丈夫? の不安半分となりましたが、おやっと思った出来事もありました。スポーツ庁の室伏広治長官やタレントでアスリートの武井壮らを招いた臨時教室。その一方、外野手を内野手に、内野手を外野手に、それぞれ起用したりしていたことに対してです。
▽幅を広げる発想の転換
 これらは専門家に言わせれば、無駄、単なる遊び、など一笑に付されることになるのかもしれません。しかし、1年365日、内野を守り、外野を守り、打ち、投げていた“スペシャリスト”の野手、投手が、他ポジションを受け持つことは、違う景色に接することで視野を広げる、判断力の幅を増す、という効果が生じます。明らかに「右脳の活性化」が読み取れる発想。新庄という不思議人間は、あるいはこういう知識を身につけているのか、とも思い、感心させられました。
 まあ、しかし、長いペナントレースをどう戦うのかが本題。その結果によって監督の力量が問われることになりますが、果たしてどうなることでしょうか。(了)