◎完全試合、記録認定の謎―(菅谷 齊=共同通信)

2022年4月10日の13連続を含む19奪三振という佐々木朗希(ロッテ)の大記録達成で、久しぶりに完全試合が注目されている。佐々木は1週間後の17日にも8回を無走者に封じた。“サンデー朗希”の快投で日曜日の入場券は最大のお得である。
 その日以来、走者が出ないと、中盤から「完全試合か」とざわめいた。エンゼルスの大谷翔平が20日(日本時間21日)のアストロズ戦で7回途中まで走者を一人も出さなかったときも、メディアは声を上げ続けた。まだ試合の3分の2時点だったことから、投手出身の評論家は「騒ぐのは早すぎる。7回からが勝負なんだから」
 完全試合の認定は、9イニング以上を無走者を条件としている。9回まで完全でも延長で走者を出すと認められない。
 西武のエースだった西口文也は05年8月27日の楽天戦で9回まで無走者だったのだが、打線の援護がなく延長戦に。10回表、先頭打者に四球を出して大記録から一歩後退。12回に安打を許してノーヒットノーランにもならなかった。9イニング無走者なのに記録にならない。“謎”である。
 野球の試合は9イニングで、10回からはエキストライニング(補回)という。それならば西口の投球は記録として認めてもいいのではないか、という声が上がったものである。
 大リーグに同じケースがあった。1959年、パイレーツのハーディ・ハデックスはブレーブス戦で延長12回まで無走者に抑えていたが、13回に安打を許した後、0-1で敗戦投手になった。そのときは、9回まで無走者だったことから完全試合とした。ところが30年後に「9回以上の条件にあてはまらない」との理由で取り消された。12回より3イニング少なくても、9回勝利で終了した方が記録となる、としたのである。
 佐々木朗の8回無走者で降板した試合は両軍無得点で延長に入り、10回表に日本ハムが本塁打を放ち1-0で勝った。佐々木朗が9回も続投して無走者で交代したらどのように扱ったのか。きっと大騒ぎになっただろう。その騒ぎは西口のときとは比較にならなかったと思う。
 9回無走者は滅多にできる快投ではない。日本では佐々木朗で16人目。おおよそ平均数年、8000試合に1回という貴重なものである。投球制限の時代から考えて完全試合の記録認定は再考したら?、と思う。(了)