「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」(完)―(山田 收=報知)
▽最終回 結論めいたもの
2020年6月にスタートしたこの連載で、DHにまつわる話題を取り上げてきた。パ・リーグがDH制を採用して、2024年は50年目のシーズンになる。すっかり制度として定着したものであり、今やDHを採用していないのは、高校野球、東京六大学野球など僅か。MLBでは21年、臨時でナ・リーグも採用。翌22年からは本格的なユニバーサルDHとなった。
19年オフに「セ・リーグでもDHを」の声が上がったこともあり、改めてDHの歴史、DHが生んだ魅力的な打者から始めて、セ導入の賛成・反対両論等をいくつか紹介してきた。それはほんの一部で、球界内外には様々な意見が存在している。拙稿では、セがDH採用を決定すれば、どうなるかの推察を底流に論を進めてきたつもりだ。今回、連載の締めくくりとして、改めてまとめをしたい。
結論からいえば、セもDHを採用すべきだと思う。やってみて、何かしら問題があるならば、やめればいいというスタンスでスタートしていいのではないか。DH制反対を主張する人の拠り所は「野球は9人でやるもの」である。かつて川上哲治氏は「打つだけの人は片輪だ」といい、野村克也氏は「野球を9人でやることは野球規則に書いてある」と、反対論をぶった。
球界を代表する大監督に盾突くことになるが、時代とともに変化があっていいし、多様性も認めるべきだ。米国生まれの球技の代表格である野球や、アメリカンフットボールは、攻守交替とポジションの役割分担が明確なのが特徴だ。打つだけのDHはフットボールでいえば、パンター・キッカーか。それぞれの専門性がその競技を支えている。
私自身が賛成する理由は①投手の故障のリスクを下げられる②選手寿命を延ばせる③選手の雇用を確保できる④打撃力アップとそれに対抗する投手力の充実で両者が相俟って野球が魅力的になる、などである。②に関しては、巨人とヤンキース、レイズなどア・リーグで日米10年ずつプレーした松井秀喜氏が語っている。「個人的にはDHあったお陰で選手寿命が延びた。ア・リーグに移籍して良かった」。左ひざを痛めたことで、2009年にはポストシーズンを含め157試合に出場したが、すべてDHか代打であり守備にはつかなかった。
③でいえば、レギュラーが増える分、または外国人補強にかかる分、総年俸は増加し、球団経営への圧迫も考えられることは記しておきたい。
あえていえば、MLBと同じようにやる必要はない。年中DHではなく、DH採用シーズンと不採用(9人制)シーズンを作ったり、1年のシーズンの中でもDHが使える期間と9人制の期間を設ける考え方もある。MLBでは“大谷ルール”で投手とDHが兼任できる時代になっている。ベーブ・ルース以来の快挙と言われる大谷の出現で、DHルールそのものが進化し、二刀流選手の更なる誕生へのいざないとなるかもしれない。二刀流だったら現状のセ・リーグでできるじゃないか、といわれそうだが、投げない日に打席に立つことが難しい。ともあれ、夢が広がりそうだと思うのは私だけだろうか。(完)