「大リーグ見聞録」(65)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎オークランド・アスレチックスの球場の思い出
▽ラスベガス移籍決定
 2583人、2685人、2064人、3261人―これは藤浪晋太郎が所属する、オークランド・アスレチックスの今年(2023年)5月2,3,15,16日(現地)の観客数である。
もともと客入りは少なかったが、弱いことに加え(現地5月27日現在、10勝43敗、勝率189でア・リーグ西地区最下位)、ここ数年の本拠地移籍問題が加わり、今年になって一気に客離れが進んだ。
そして4月にネバダ州ラスベガスへの移籍が決定。5月15日には地元企業と提携、ドーム球場の建設も発表された。
 私が初めてアスレチックスの球場を訪れたのは2000年の7月。今も手元にそのときにワンデー・パスがある。02年から09年までレンジャースの監督だった、バック・ショーオルター(現メッツ監督)から話を聞いたのも同球場のベンチ裏だ。06年にソフトバンクからマリナーズに入団した、城島健司の試合もそこで初めて見た。そして最近では2019年に出かけた。
球場は1968年完成。以前はともかく、19年のときはさすがに「古い」と感じた。
球場内の球団事務所も狭い。他の多くの球場の通路はビールやホットドックの売店、帽子やTシャツなどを売るチームストアがずらりと並んでいる。アスレチックスのスタジアムの通路は空きスペースが多い。通路には選手の折れたバットの販売所もあった。とても売れているようには思えなかったが、今から思えば売店やストアを増やしても、それに見合う客が来なかったためかもしれない。
▽次は2球団増加へ
 もともと、アメリカンフットボールとの供用スタジアム。今、大リーグの球場は単に野球観戦だけでなく、子供の遊び場や大人が楽しめるスペースを設けるなど「ボールパーク」化している。その点でも取り残された感じがした。
 アスレチックスは25年に本拠地をラスベガスに移し、27年には新球場が完成する予定だ。そしてこれはMLBにとって新たな一歩となる。
近い将来、2球団を増やす構想があるからだ。MLBのマンフレッド・コミッショナーも球団増を公言している。ナッシュビル(テネシー州)、シャーロット(ノースカロライナ州)、ポートランド(オレゴン州)、ソルトレークシティ(ユタ州)やカナダのモントリオールがメジャー球団の誘致を発表、あるいは誘致の計画があると報じられている。
MLBのチームを持つことは都市のステータスを上げ、観光客の呼び水になるなど、税収面のメリットもあるからだ。どの都市に新チームができるかによって、リーグ再編や地区変更もある。MLBの改革は留まるところを知らない。(了)