「大リーグ見聞録」(67)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎極端な守備シフト禁止で大記録達成?
▽82年ぶりと史上初
 今年、大リーグの打撃部門で歴史的な記録が達成されるかもしれない。その主役はマイアミ・マーリンズのルイス・アザエズ内野手。ベネズエラ出身で右投げ左打ちの26歳。狙うのは打率4割と両リーグでの2年連続の首位打者だ。4割なら1941年のテッド・ウイリアムズ(打率・406、レッドソックス)以来の快挙だ。
首位打者は意外にも両リーグでタイトル獲得はデビット・ジョン・ルメイユ(ヤンキース)の1人だけ(2016年にナ・リーグのロッキーズで打率・348、2020年のア・リーグのヤンキースで打率・364)。ただ、20年はコロナ禍で試合数が80。従来と同じには扱えまい。
アザエズは昨年、ア・リーグのツインズで打率・316でタイトル獲得。今季のマーリンズはナ・リーグで、打率トップをキープしている(現地7月28日現在3割7分6厘)。2年連続、あるいはそれ以上の連続首位打者は数多くいるが、異なるリーグで連続首位打者は100年を超えるMLBの歴史の中でも史上初だ。
アザレズは16歳でプロ入り。マイナーの時代から、その打撃センスは高く評価され、メジャー1年目の2019年には92試合ながら打率・334を記録している。広角に打ち分けるスプレーヒッターだが、今年のハイ・アベレージはルール改正が寄与している。極端な守備シフトが禁止され、二塁ベースを軸に一塁側と三塁側に2人ずつの内野手を配備する規定ができたからだ。
▽固め打ちが得意
ルール改正に関する、昨年と今年(オールスターまでの前半戦)のデータが発表されている。その中で守備シフトの変更は左打者のゴロの打球に特に有利に働いている、との数字が出ている。昨年は.279だったが、今年は.297(ちなみに右打者は.296と.297とほぼ同じ)。左打者の平均打率も.245から.248とわずかだがアップ。アザレズも昨年は引っ張ったゴロの打率は.120だったが、今年は.224と上がっている。
アザレズは6月7日のロイヤルズ戦で打率を一時、4割に乗せたが、その後はやや失速気味だ。それでもMLB公式HPでウイリアムズとアザレズの比較(試合数、安打、打席、打率)を連日載せるなど、関心は高い。6月には1試合5安打を3回記録するなど、固め打ちが得意だ。ルール変更を追い風に82年ぶりと史上初のパフォーマンスに期待したい。(了)