◎大リーグ球団増加の余波(菅谷 齊=共同通信)

大リーグのチームが2つ増え、計32球団になる、という。
 1901年、ナショナル・リーグとアメリカン・リーグの2大リーグで近代野球の歴史が始まった。1リーグ8球団の16球団時代である。
60年代になってエクスパンション(球団拡張)政策が実行され、徐々に増加。球団増に伴い地区制度を導入し、当初は東地区と西地区だったのが、しばらくして中地区を作って現在の3地区となった。
今はナ、アとも15チームとなっているが、長くナ14、ア16が続いた。アからナに1チームが移り、15チームずつとなり、各地区5球団とそろった。試合制度もプレーオフ、地区優勝決定シリーズ、リーグ優勝決定シリーズ、ワールドシリーズとポストシーズンが一大イベントに発展した。
この球団拡張は野球地図を広げ、ファンを増やした。その一方、選手のレベルは落ち、日本の高校野球にも劣るプレーがしょっちゅう起こっている。顕著なのは投手不足で、それがホームラン量産につながっている。バリー・ボンズのシーズン73本塁打はその表れの代表といっていい。
球団が増えたことで選手数が必要となった。野球を行っている各国から集めた。それが日本選手の大リーガー行きの大きな理由である。さらに2チーム増えるのだから、日本選手がもっと狙われるのは間違いない。そうなると日本球界のレベルが落ちていくことにつながる。その穴埋めは、球団が増えたにもかかわらず大リーグ球団と契約できなかった外国人選手に頼るしかない。
いまさら日本選手の大リーグ行きのルールを変更して歯止めをかけることはさすがにできない。野球人口が減っている現状を見ると、将来の人材不足となるうえに、優れた選手は大リーグ引っ張られて行く可能性が高いから日本球界は先細りしていくのではないか。
一時期、日本でも球団増加の話が出た。野球地図を拡大するのはいいことだと思ったけれども、大リーグが増加となると選手数の問題が浮上し、雲行きが俄然怪しくなる。日本球界の宿題である。(了)