第68回「ゴー・カブス・ゴー」(島田 健=日本経済)

◎作者の死後に花開く
▽瀕死のファン
フォークのシンガーソングライター、1948(昭和23)生まれのスティーブ・グッドマンはシカゴ生まれだけにカブス一筋。だが、81年、不振のチームにハッパをかける意味も込めて「瀕死のカブスファンの最後のリクエスト」を書いた。昔の栄光は何処に行った。リーグ優勝は日本に原爆を落とした年以来ないし、わがチームは「ナショナルリーグの玄関マット」、リグレー球場は「蔦に覆われた墓地」とおとしめる内容だ。当然本拠地球場での演奏は禁止された。
▽ラジオが動く
カブスのラジオ放送のパートナーだったWGN/720が84年に動いた。現状を変えるために応援歌も変えようとプログラム・ディレクターのダン・ファビアンがグッドマンにラジオのための新曲を依頼したのだ。内容はとにかく明るく、前向きに合唱しやすいという要請だ。コーラス部分は「彼らは唄っている ゴー・カブス・ゴー ゴー・カブス・ゴー カブスは今日は勝つ」「リーグベストになるためのパワーもスピードもある」と威勢がいい。この年からラジオで流され、地区優勝も果たしたので人気が上昇した。
▽公式曲への長い道のり
84年10月、グッドマンが長年の白血病との戦いに敗れて亡くなったことも影響したのか、87年には大物であるビーチ・ボーイズの唄に変更されるなど、不遇の時代が続いた。流れを取り戻したのは07年と08年の地区連覇と07年のグッドマンの伝記の発売である。人気が復活するにつれ、勝利の後の合唱曲として固定されて行った。この曲と熱狂的なファンの応援もあって108年ぶりとなった16年のワールドリーグ制覇の後には、米国のデジタル音楽サービスで売り上げが急上昇し、アマゾン・ミュージックではトップ5 、アイチューンズではトップ15に入った。
▽歌詞は時代遅れに
元々WGNのために作られた唄なので2番目のコーラスには「カブスは今日勝つ予定 野球の時代がまた戻ってきた 全てがWGNで聴けるよ」とラジオ局のコマーシャルも入っている。当然ではあるが、実はWGNは15年に放送権を手放してしまったのである。カブスが自前の放送部門を作ったゆえらしいが、直すのだったらどう変更するのか注目である。
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