「記録の交差点」(4)-(山田 收=報知)

第4回 坂本勇人(巨人)④
 現役最多安打記録保持者・坂本(日米通算では青木宣親の2702本)が、ファンに夢を見させてくれるのが、更なる高みへの挑戦だ。金田正一の400勝、王貞治の868本塁打とともに、日本球界の金字塔ともいうべき張本勲の3085安打(イチローの日米通算4367安打は別格として)だ。拙稿を書いている時点で、2023年は残り4試合となっているので、18年目以降のシーズンの楽しみとしたい。
 「更新は期待しているが、難しいだろう」と張本自身、正直な思いを語っているが、今の日本球界で、この大記録にチャレンジできるのは、坂本だけだろう。17年目の最終盤で、2319安打。トップとの差766本は大きな壁だ。現実的なターゲットは、右打者最多安打(2901=野村克也)、右打者初の3000安打だろうが、その可能性を探る前に、張本の偉大さを振り返ってみる。
 ルーキーで東映のレギュラーを奪い、入団以来20年連続100安打以上。23年間の現役生活で、16度の3割超え、さらに3割2分以上のシーズンが11度。首位打者7度とともに、NPB記録である。付け加えるなら、通算打率3割、3000安打、500本塁打、300盗塁をクリアしているのは、この人だけだ。イチローに抜かれるまで、シーズン打率.3843はパ・リーグ記録だった。王と並び日本球界が生んだ最高の打者であることは間違いない。
 この不世出の大打者との争いが可能なのか。
2000安打達成は、張本=14年目、1733試合。坂本=14年目、1783試合だった。
坂本は右打者としては史上最年少である。その後、張本は2500安打(18年目・2185試合)、3000安打(22年目・2618試合)と4年間隔で節目の記録を打ち立てていった。
 仰ぎ見る頂点に近づくために、坂本には何が求められるのか。当たり前のことだが、先ずは試合にレギュラーとしてコンスタントに出場することだ。張本は20年目まで、すべて100試合以上出場していた。打席数も20年間400以上。これが安打を積み重ねるためのベースとなる。すなわち、故障が少なく、体力を備えていること。
張本の時代、1963、64年(150試合)を除けば、年間130~136試合で公式戦が行われていた。その中で3075試合中2752試合に出場、出場率は8割9分5厘と高い。坂本の場合、レギュラーでなかった1年目や故障の影響もあり、出場率は8割6分9厘である。
 坂本にとって、2024年以降、レギュラーとして試合に出場し続けることがポイントとなる。23年9月7日のヤクルト戦(神宮)、2081戦目にして、プロ初の三塁守備についた。以前から指摘されていたショートの守備にかかる負担軽減が、大記録挑戦への追い風となるか。次回もこの続きを。(続)=記録は23年9月26日現在=