「記録の交差点」(6)-(山田 收=報知)
◎第6回 中村剛也(西武)①
前回までは、坂本勇人にスポットライトを当てながら、安打、二塁打にまつわる記録の話題を取り上げた。今回からは野球の華・本塁打に注目したいと思う。日本球界でホームランにかかわる記録といえば、多くを王貞治が持っている。その王からプロ野球最多記録を奪った男を取り上げたい。
それは満塁本塁打。王は1974年7月15日、阪神戦(後楽園)で通算13本目をマーク、野村克也(南海)、江藤慎一(ロッテ)の持つ当時のプロ野球記録を更新。77、78年に連続して開幕戦で叩き込み、2本を積み上げて80年に引退した。その記録を35年ぶりに塗り替えたのが、“おかわり君”こと中村剛也である。
2015年8月9日、オリックス戦(京セラD)で16本目、王超えを果たした。その後22本まで伸ばしている。中村が初のグランドスラムを記録したのは、入団4年目の2005年6月26日、楽天戦(長野)だった。満塁本塁打の難しさは、当たり前だが、満塁の状況で打席に立つことが条件となることだ。尚かつここで本塁打を打たなければならない。これはかなりハードルが高い。そこで、中村の満塁時での成績を調べてみた。
2023年までの21シーズンで、229打席。結果は、202打数59安打。うち二塁打11本、三塁打0、本塁打22、打点196、犠飛12、四死球15、三振54、併殺打10、打率.292、長打率.673、出塁率.323という具合だ。自身の通算打率.254を考えると、高打率といえる。打数とほぼ同じ数の打点も併せて考えると、満塁に強い男ではないか。
総本塁打に占める満塁ホーマーの割合は、王(868本中15本)が57.1本に1本。中村は471本中22本だから21.4本に1本。かなり満塁本塁打率は高い。もっとも王の凄いのは、押し出しが24度もあったことだ。
“満塁男”と言えば、駒田徳広(巨人、横浜)の名を思い起こす人も多いに違いない。1983年4月10日、開幕第2戦の巨人―大洋戦(後楽園)でスタメンデビューした駒田。初回のプロ初打席は1死満塁。2軍戦でも相性の良かった右田一彦から右越えにプロ初アーチ。さらに、その後1か月間に3度あった満塁のチャンスに単打、二塁打、三塁打と打ちまくり、合計14打点も叩き出した。なんとこのシーズン、満塁時10打数7安打、打率7割と無類の強さをアピールした。
駒田は、195本塁打中満塁弾が13本。15.0本に1本と驚異的な満塁本塁打率を残している。中村が思い出させた満塁本塁打のストーリーは次回に続く。=記録は23年シーズン終了時点=(続)