「たそがれ野球ノート」(7)-(小林 秀一=共同通信)

◎野球漬けの一年でした
老い先の短い身にとってすら、今後何度か「すごい一年だった」と振り返ることになるに違いない。2023年、令和5年は野球ファンにとって中身の濃いシーズンだった。
たそがれ筆者もその一年にどっぷりとつかった。久しぶりにスタンド観戦が増え、まずは3月のWBC。準々決勝の日本イタリア戦では大谷先発に恵まれ、1球を投じるたびに発する雄たけびを生で聞かせていただいた。
フロリダに移動した侍ジャパンは吉田の同点3ラン、村上の復活打などで準決勝を逆転勝ち。米国との決勝は最大のハイライトシーンとなった大谷とトラウトの対決で締めくくった。日本中がテレビ中継に沸き、これほど国民的関心事になるとは予想できなかった。
大谷はその後、ほぼシーズンにわたって二刀流を楽しませてくれ、10勝、44本塁打。本塁打のタイトルとMVPを獲得。さらに高額でのドジャース移籍のニュースも注目を集めた。
阪神の「アレ」は決して関西だけでなく日本列島を駆け抜ける話題になった。筆者もボルテージの上がるトラファンを東京ドームのスタンドで体感した。かつての伝統の一戦などを思い起こして感慨にしたっていると、なんと試合は延長12回引き分けまでたっぷり楽しませてくれた。
オリックスとの日本シリーズは関西行きを計画したものの実現できなかったが、8-0を応酬する序盤戦からテレビの前で7試合を楽しませてもらった。その直後、元西武監督の伊原春樹さんにお会いする機会があって、「面白かった。いいシリーズでしたね」ともらしたら、「なんでよ。こんなミスの多いシリーズはめずらしい。僕に言わせれば最低のシリーズですね」と鼻で笑われてしまった。せっかく喜んでいるのにそこまで言わなくてもねえ。
夏にはこの欄にも書かせていただいたが、待望のエスコンフィールド観戦を実現した。そしてとどめはアジアチャンピオンシップで井端新監督の初陣も観戦。フレッシュな日本代表ははつらつとしていて、延長タイブレークの末の優勝で喜ばせてもらった。
このコラムを書かせていただいていることがきっかけにもなって、今年もできる限りスタジアムに足を運ぼうと思う。そう。ボケ防止の効果も兼ねて。(了)