◎スキャンダル(菅谷 齊=共同通信)

 「醜聞」(しゅうぶん)-。スキャンダルのことである。昨今、各業界で頻発しているが、プロ野球界でもお目にかかる。
 プロ野球の場合、人気商売の類だから、現役を退いて球界を去っても事件を起こせば「元〇〇球団に所属」とされる。これといった成績を残していなくても、だ。プロ野球に入る選手は地元では有名だからで、俗に「田舎のプレスリー」などと言う。大相撲では「江戸の大関より地元の三段目」との例えがある。うまいことを言う。
 プロ野球にはかつて大スキャンダルがあった。セ・パ2リーグ制が発足(1950年)するとき、新興球団が行った「引き抜き事件」はすさまじかった。代表的なのは毎日オリオンズが阪神タイガースから3番打者の別当薫や捕手の土井垣武といった球界を代表する選手たちをゴソッと引き抜いた出来事である。毎日はいきなりパ優勝し、初の日本シリーズでも勝った。
 1リーグ時代をリードした阪神や巨人は、いきなり新参者にやられたわけで、まさに顔色なかった。とりわけ阪神の傷跡は深く、戦力の低下は巨人に後れをとり、しばらく優勝できなかった。2023年に日本一になった阪神はそんな苦難を味わっていた。
 巨人V9時代の中ごろに発覚した「八百長事件」は、社会的事件に発展した。有力選手が永久追放になった。それを乗り切ったのは巨人の長嶋茂雄、王貞治のバットだったといっていい。大リーグのワールドシリーズで敗退行為が暴露された「1919年ブラックソックス事件」の日本版だった。
 近頃はどうかというと、わいせつ事件がちょこちょこ起きている。せっかく手にしたスターの座を自らイメージダウンさせる結果を生んだ。グラウンドでプレーしていて面白いのだろうか。(了)