第72回「スイートホームシカゴ」(島田 健=日本経済)

・ブルースの定番
・謎の歌詞
シカゴ・カブスの本拠地、リグレーフィールドで勝利の後、真っ先に歌われるのはもちろん応援歌の「Go Cubs Go」だが、次に唄われるのがこの曲である。元々はロバート・ジョンソンが1938(昭和13)年に発表した、ブルースのスタンダードとも言われる名曲だが、シカゴ市の愛唱歌になるには歌詞に一つ謎があった。「カリフォルニアの国に帰って」という部分だ。その後「スイートホームシカゴ」となるのだから、色々と説が浮上した。
・マジック・サム
それをスッキリさせたのが5,60年代に活躍したブルースのギタリスト、シンガーであるマジック・サムだ。件のところは「いつものお馴染みの場所に帰って」とかえ、冒頭の歌詞もちょっと古い表現から「Come on baby don’t you wanna go」と換えた。コメディアンのジョン・ベルーシが主演した映画「ブルースブラザース」(80年)で披露したこのバージョンが大人気となり、リグレーでの定番になった。
・べルーシ
ブラザースの弟エルウッド役のダン・エイクロイドはカナダ出身だが、兄ジェイク役のベルーシはシカゴが地元。シカゴを舞台にしたこの映画は、汚い電車や綺麗な官庁街など都市に密着した、シカゴ愛に満ち溢れている。パトカーの職質で転居先を聞かれたエルウッドは「西アディソン1060」と嘘の住所を答える。そこはなんとリグレーフィールドのアドレス。別のシーンではご丁寧に球場が映し出される。
・ワンオブベスト
映画ブルースラザースは、たわいないストーリーだが、ジェームズ・ブラウン、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズ、キャブ・キャロウエーなどが出演していて聞きどころ満点のミュージカルコメディ。古い映画なのだが、もう何回見たことか。筆者の中のワンオブザベストである。脇役もどこかで見たことがある顔が並び、スターウォーズのレイア姫役も出るし、スティーブン・スピルバーグも最後に顔を見せる。この唄をこの映画でぜひ聞いていただきたい。べルーシが82年に33歳で亡くなったのは非常に残念。
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